放課後の職員室。隣の同期、〇〇先生の方から、笑い声が聞こえてくる。
「うちのクラス、今日も給食完食だったんですよ〜」「保護者から、子どもが先生大好きって言ってましたって連絡帳に書いてあって」――そんな会話を聞きながら、こちらは今日も学級崩壊寸前のクラスでクタクタ、連絡帳には保護者からの厳しいコメント。
「同じ4月にスタートしたのに、なんでこんなに差がついたんだろう」
「私、教師に向いてないのかも」
家に帰ってお風呂に入りながら、ふと涙が出る。このページにたどり着いたあなたは、たぶん今、そんな状態ではないでしょうか。
大丈夫です。同期との比較で病むのは、新任教師の「あるある」中のあるある。むしろ、比較して悩めるあなたは、自分の仕事に真剣に向き合っている証拠です。
この記事では、新任時代に同期と比較しまくって病んだ元教師の私が、その地獄から抜け出すために身につけた「比較で病まないための5つの視点」を、実体験を交えてお伝えします。読み終わるころには、明日の職員室の空気が少し軽くなっているはずです。
同期と比較してしまうのは、あなたが弱いからじゃない
まず最初にハッキリさせておきたいのは、同期と比較して落ち込むのは、人間として当たり前の反応だということ。
心理学では「社会的比較理論」と呼ばれていて、人は「同じ条件の他者」と自分を比べることで自分の位置を確かめる性質を持っています。同じ4月採用、同じ学校、同じ年齢の同期は、まさに比較対象として最強の存在。比べないほうがおかしいんです。
ただし問題は、「同期は自分よりうまくいっている部分しか見せていない」ということ。教師は失敗を職員室で言いにくい職業です。「学級崩壊しかけてます」「保護者からクレーム来ました」とは、なかなか言えない。
つまりあなたが見ているのは、同期の”いいところだけ”を切り取ったハイライト動画。それと自分の”すべて”を比べたら、勝てるわけがない。
元教師の私が、同期と比較して病んだ話
正直に書きます。私も新任のころ、同期と比較しまくって病みました。
同じ学年に同期の女性教員がいました。彼女のクラスは、いつも「いいクラス」と言われていた。給食もよく食べる、運動会の練習もまとまっている、保護者からの評判もよさそう。放課後、職員室で談笑する彼女の声を聞くたびに、自分のクラスが情けなく思えてきました。
その彼女に、5月の終わりごろ「クラス、どうやってまとめてるの?」と思い切って聞いたんです。返ってきた答えは衝撃的でした。
「いやいや、うちも昨日、子どもが3人下校時に泣いて帰ったし、今朝も保護者から電話あって…全然うまくいってないよ」
えっ、と固まりました。私が見ていた「うまくいってる同期」の裏側には、私とまったく同じ苦労があったんです。
このとき気づきました。「同期はうまくいってるように見えて、実は同じくらい悩んでいる」。これがすべての始まりでした。そこから少しずつ「比較で病まない視点」を身につけていきました。
比較で病まないための5つの視点
私が現場で身につけた、「同期との比較で潰されない」5つの視点を紹介します。明日から1つずつ取り入れてみてください。
視点1:「他人のハイライト」と「自分のNG集」を比べていることに気づく
SNSで友達の楽しそうな写真を見て凹むのと同じ構造。あなたが見ているのは、同期の”うまくいった瞬間だけ”です。
同期は、家に帰ってから一人で泣いているかもしれない。連絡帳のクレームに2時間悩んでいるかもしれない。あなたに見せていないだけ。
「比較したくなったら、自分は今、相手の何を見てる?」と一度立ち止まる。これだけで、比較の呪いは半分解けます。
視点2:「比較の軸」は職業人生で何回も入れ替わる
1年目に「いいクラス」と言われていた先生が、3年目に学級崩壊する。逆に、1年目はボロボロだった先生が、5年目に学校で一番頼られる存在になる。これ、教育現場では本当によくある話です。
1年目の評価は、ほとんどが「子どもの当たり外れ」と「学年配置のラッキー」で決まります。あなたの実力ではない。同期との差も、ほとんどがその「運」です。
3年後、5年後の自分を比較対象にする。今日の同期との差はたいしたことありません。
視点3:「うちのクラスのよさ」を毎日1つ書き出す
家に帰ったら、ノートに「今日、うちのクラスで嬉しかったこと」を1つ書く。
たとえば。
- ○○くんが「先生、おはよう」と笑ってくれた
- 掃除の時間、Aさんが自主的に窓を拭いていた
- 給食のおかわりを譲り合っていた
これを2週間続けると、「自分のクラスにもいいところがたくさんある」と気づけます。比較で凹みやすい人は、自分のクラスの良さを見る目が曇っているだけ。意識的に拾う訓練をしてください。
視点4:「比較相手」をプロに切り替える
同期と比較するから苦しい。比較相手を「ベテランの実力派教師」に変えると、不思議と気持ちがラクになります。
たとえば、学年主任や、本に出てくる尊敬する先生など。「あの人と比べたら、私が今1年目でできていないのは当然」と思える。同期は条件が同じすぎて比較対象として残酷なんです。
「学ぶための比較」はOK。「自分を責めるための比較」はやめる。この使い分けが大事です。
視点5:「比較で病む時期」には終わりがある
これが最も大事。同期との比較で病む時期は、たいてい1〜3年目で終わります。
3年目を過ぎると、人事異動で同期がバラバラになる、結婚・出産でライフステージが分かれる、得意分野(生徒指導、ICT、特別支援など)が分かれる――。「同じ条件で比較できる相手」が物理的にいなくなるんです。
今のしんどさは、永遠ではない。あと2年もすれば、同期と比較して病む夜は嘘のように消えます。だから今は、その時期を「乗り切る」だけでいい。
それでも病んでしまった日にやってほしいこと
視点を持っていても、ふとした瞬間に同期の声が聞こえて、ガクッと落ちる夜があります。そんな日に試してほしい3つを紹介します。
1. 物理的に同期から距離を取る
放課後すぐに帰る、職員室の同期と離れた席で作業する、研修で同期の話を聞きすぎない――。比較は「目に入る情報」が引き金です。情報を遮断するだけで、ずいぶん楽になります。
2. 自分よりちょっと先輩の「失敗談」を聞く
5年目・10年目の先輩に、「1年目のときの失敗、聞いてもいいですか?」と聞いてみてください。たいていの先輩は「もう、地獄だったよ〜」と山ほど話してくれます。今うまく回しているように見える先輩も、1年目はあなたと同じだったと知るだけで、肩の力が抜けます。
3. 自分の「向いてないモード」と向き合う
「やっぱり自分は教師に向いてないのかも」――この感情は、無理に押し殺さない。むしろ、ちゃんと向き合うほうが回復が早いです。
自己嫌悪との具体的な向き合い方は、こちらの記事に詳しく書きました。
👉 【元教師が伝えたい】新任教師の自己嫌悪との向き合い方|元教師が教える折れない心のつくり方
1年目のしんどさを乗り切るためのセルフマネジメントは、こちらが参考になります。
👉 【元教師が語る】残業が続いてつらいときに読んでほしい|新任1年目のセルフマネジメント完全ガイド
「向いてない」が続くなら、それは比較じゃなく環境のサイン
視点を変えても、3つのリカバリーをやっても、それでも「毎日教室に立つのがつらい」「同期どころか他の先生の顔を見るのもしんどい」状態が2ヶ月以上続いているなら――。
それはもう「比較で病んでる」を超えています。あなたの心と体が、「この環境はあなたに合っていない」と教えてくれているサインです。
無理に続けて心を壊す前に、「逃げ道があると知っておく」だけでいい。私自身、現役教師時代にdodaに登録して、面接まで受けに行った経験があります。結果的には教師を続けたのですが、「いつでも辞められる」と知っていることが、職員室で深呼吸する余裕を生んだと今でも思っています。
👉 「教師を辞めたい、朝起きられない」あなたへ|元教員がdoda面接まで行って結局辞めなかった話と、それでも辞めるべき3つのサイン
職員室の人間関係そのものがしんどい場合は、こちらもあわせてどうぞ。
👉 職員室が気まずいと感じたあなたへ|元教師が伝えたい人間関係の乗り越え方
まとめ|あなたは、あなたのクラスでしか証明できない
長くなったので最後に。
比較で病まないための5つの視点
- 「他人のハイライト」と「自分のNG集」を比べていることに気づく
- 「比較の軸」は職業人生で何回も入れ替わる
- 「うちのクラスのよさ」を毎日1つ書き出す
- 比較相手を「同期」から「プロ」に切り替える
- 「比較で病む時期」には終わりがあると知る
同期の○○先生は、同期の○○先生のクラスでしか先生をやれません。あなたのクラスの先生は、この世であなただけ。子どもたちは、あなたを選んで毎日教室に来てくれています。
明日の朝、職員室で同期の声が聞こえても、ちょっとだけ深呼吸して、自分の教室に向かってください。あなたのクラスには、あなたを待っている子どもがいます。それで充分です。

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