「あれ、〇〇さん、最近元気ないな…」
朝の健康観察で気になった子。給食を残す量が増えた。休み時間、いつも一緒だった友達と離れて一人で本を読んでいる。連絡帳に保護者から「最近、朝の支度が遅くて…」と短いコメント。
気にはなるけれど、「これって不登校のサインなのか、それとも一時的なものなのか」が判断できない。先輩に相談しようにも「気のせいじゃない?」で終わるかも、保護者に連絡したら大ごとにする教師と思われるかも――。
そうやって様子を見ているうちに、その子は朝に休み始め、やがて「行きたくない」と言うようになる。このページにたどり着いたあなたは、たぶん今、そんなモヤモヤを抱えている新任教師さんだと思います。
結論から言います。不登校は「ある日突然」始まるのではなく、必ず3〜4週間前から教室で小さなサインを出しています。そして5月は、4月の緊張が切れて、そのサインが一番出やすい時期です。
この記事では、元教師の私が現場で「あ、これはそろそろ来るな」と気づいてきた7つの不登校サインと、サインに気づいたときに新任教師がやるべき早期対応の手順を、実体験を交えて解説します。読み終わるころには、明日の朝、教室を見渡す視点が一段階深くなっているはずです。
なぜ5月に不登校が増えるのか
文部科学省の調査でも、不登校が新たに発生する月としては5月・6月・9月が突出して多いと言われています。
その理由はシンプルで、「緊張で頑張っていた糸が、長期休み明けに切れる」から。
- 4月:新しいクラス・先生・友達への適応で全力
- GW:張り詰めていた糸がふっとゆるむ
- 5月:再起動できないまま、心身に不調が出始める
大人でも「連休明けは仕事に行きたくない」と感じますよね。子どもはそれを言語化できないぶん、身体や行動に先に出る。それが「サイン」です。
見逃したくない7つの不登校サイン
新任教師の私が現場で「これは要注意」と判断していたサインを、頻度の高い順に7つ。
サイン1:朝の表情が硬い・無表情になる
一番分かりやすいのが朝。登校してきた瞬間の表情を毎朝見ていると、変化がはっきり出ます。
4月は「おはよう!」と笑顔だった子が、5月のある日からスッと表情を消して入ってくる。これに気づけるかどうかは、毎朝、教師が教室の入り口に立っているかでほぼ決まります。
サイン2:給食を残す量が急に増える
不調は消化器系に最初に出ます。「お腹空かない」「気持ち悪い」と言って残す量が増えたら、要観察。
特に、4月までは完食できていた子の急変は黄色信号です。「好き嫌いが出てきた」ではなく「食べられなくなっている」可能性があります。
サイン3:休み時間、一人でいる時間が増える
4月は誰かと一緒に遊んでいた子が、5月から急に一人で読書・お絵描きに切り替わる。これは「人と関わるエネルギーが落ちている」サイン。
本人が「ひとりが好きなんで」と言うこともありますが、4月の様子と比較して急変している場合は要注意です。
サイン4:保健室への来室回数が増える
「お腹痛い」「頭痛い」で保健室に行く回数が、月に2〜3回を超え始めたら養護教諭と必ず情報共有してください。
養護教諭は「同じ子が頻繁に来ている」をすぐ把握しています。新任教師から声をかけると、向こうも「実はこの子、最近毎週来てて…」と教えてくれることが多いです。
サイン5:宿題・提出物の出し忘れが急に増える
4月は出していた子が、5月から「忘れました」を連発する。これは「家でも学校のことに向き合えなくなっている」サインの可能性があります。
叱るのではなく、「家でなにかあった?最近どう?」と一言だけ聞くのがおすすめです。
サイン6:遅刻が始まる
5分・10分の遅刻が週1〜2回出始めたら、「朝、家を出るまでに時間がかかっている」サイン。
保護者から「朝、起きてこなくて…」「お腹痛いと言って…」という連絡帳コメントが入ったら、不登校の入口に立っていると思って間違いありません。
サイン7:「先生、今日何時間目まで?」と聞いてくる
これは見逃しがち。「あと何時間で終わるか」を気にする発言が増えたら、学校にいることがしんどくなっているサインです。
カウントダウンしないと耐えられない=それくらい今が苦しい、ということ。明るい口調で言われても、内容そのものに意味があります。
サインに気づいたら|新任教師がやるべき早期対応4ステップ
「これはサインかも」と思ったら、できるだけ早くこの4ステップを順番にやってください。2週間以内の対応が、その後を大きく分けます。
ステップ1:1日かけて、その子の動きを意識して見る
翌日、その子の朝・休み時間・給食・帰りの4場面を意識して観察します。サインがいくつ重なっているか、誰と話していて誰とは話していないかを把握。
このとき、本人にバレないように見るのが鉄則。「最近どう?」と直接聞くのは、もう少し信頼関係を積んでから。
ステップ2:養護教諭・前年度担任と情報共有
放課後、養護教諭のところに行って「○○さん、最近気になってて。保健室の様子どうですか?」と聞く。これだけで多くの情報が出てきます。
余裕があれば前年度の担任にも一言。「去年のこの時期、どんな様子でした?」と聞くと、その子の癖や不調パターンが分かります。
気になる子への初期対応の基本は、こちらの記事にもまとめてあります。
👉 「この子、どう対応すれば…」気になる子・落ち着きのない子への初期対応|元教師が教える特別支援の始め方
ステップ3:本人に「短く」声をかける
2〜3日観察したら、休み時間や給食準備中などのさりげない場面で、短く声をかけます。
「最近どう?」よりも、こう聞くのがおすすめ。
「○○さん、最近ちょっと疲れてる感じする?大丈夫?」
大事なのは「先生はあなたのこと、ちゃんと見てるよ」というメッセージを伝えること。長く話さなくていい。30秒でいい。これだけで子どもは「気づいてくれてる」と感じます。
ただし、クラスのみんなの前では絶対に聞かない。さりげなく1対1の場面を作ってください。
ステップ4:保護者に「相談ベース」で連絡
サインが2つ以上重なっている、または本人に声をかけても表情が暗いままなら、保護者に連絡します。
このときのポイントは、「報告」ではなく「相談」のトーンで連絡すること。
「○○さん、最近少し疲れている様子があって、お母さんから見たお家での様子はどうですか?何か気になることがあればぜひ教えてください」
「学校で問題があります」と言うと保護者は身構えます。「家庭の様子を教えてほしい」というスタンスなら、保護者も話しやすくなります。
保護者対応の基本は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
👉 【保存版】保護者からの電話が怖い新任教師へ|元教師が教える保護者対応の5つの心構え
元教師の私が「サインを見逃した」苦い経験
正直に書きます。私は新任2年目に、不登校サインを完全に見逃した経験があります。
5月の中旬、ある男の子が「最近、給食残すなぁ」「朝、表情硬いなぁ」と気にはなっていました。でも、行事の準備で忙しく、「まあ、そのうち戻るだろう」と先延ばしに。
気づいたら6月の頭、その子は3日連続で休み、母親から「学校に行きたくないと泣いている」という電話が入りました。そこから断続的な欠席が続き、結局2学期の途中まで完全には戻れませんでした。
あの5月、もしサインが出た翌週に動いていたら、結果は違ったかもしれない。今でもそう思っています。
新任教師さんに伝えたいのは、「気のせいかも」と思ったら動くでちょうどいいということ。空振りでもいい。早く動いたほうが、絶対に後悔しません。
もしすでに「行きたくない」が始まっていたら
サインの段階を超えて、本人が「行きたくない」と口にし始めた場合は、対応のフェーズが変わります。
この段階での声かけ・対応の具体例は、こちらの記事に詳しくまとめてあります。
👉 不登校がちの子への声かけ、間違っていませんか?元教師が教える”再登校につながる言葉”とは
👉 クラスになじめない子への声かけ|元教師が教える”心を開く言葉”とNGワード
そして、教師であるあなた自身のサインも見逃さないで
最後に大事なことを1つ。
子どもの不登校サインを見抜く目を持っている先生は、たいてい「自分自身のSOSサインには鈍感」です。
毎朝、出勤前に胃が痛い。日曜の夜が怖い。子どもの顔を思い浮かべると涙が出る――これらは、子どもの不登校サインと同じ重さのあなた自身のサインです。
「教師を続けるかどうか」を本気で考えるところまで追い込まれていなくても、「いつでも辞められる」と知っているだけで、心の余裕はまったく違ってきます。
👉 「教師を辞めたい、朝起きられない」あなたへ|元教員がdoda面接まで行って結局辞めなかった話
まとめ|明日の朝、教室を見渡すときに思い出してほしいこと
長くなったので最後に整理。
不登校の7つのサイン
- 朝の表情が硬い・無表情
- 給食を残す量が急増
- 休み時間、一人でいる時間が増える
- 保健室への来室回数が増える
- 宿題・提出物の出し忘れが急増
- 遅刻が始まる
- 「あと何時間目?」発言が増える
気づいたらやる4ステップ
- 1日意識して観察
- 養護教諭・前年度担任と情報共有
- 本人に「短く」声をかける
- 保護者に「相談ベース」で連絡
新任教師にとって、不登校サインの早期発見は本当に難しいスキルです。でも、「気にかけてくれる先生がいる」というだけで、子どもは登校を続けられることが多い。
明日の朝、教室の入り口に立って、子ども一人ひとりの顔を見てください。それだけで、もう半分以上できています。

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