ブログのお悩みフォームに、こんな相談が届きました。ご本人の許可をいただき、内容が特定されないように、ぼかして要約して紹介します。
掃除の時間に、班の子に「掃除をやって」と頼んでも、理由をつけてやってくれない、という相談です。
相談を送ってくださって、ありがとうございます。掃除をやらない子への対応は、担任をしていた頃の私も向き合ってきたことでした。
この記事は、主に先生に向けて書いています。そのうえで、最後に「同じ班で困っているあなたへ」という短いメッセージも書きました。先生ではない方は、そこから読んでもらってもかまいません。
結論:理由を論破せず、「仕組み」と「関わり方」で変える
先に結論をお伝えします。
理由をつけて掃除をやらない子に、その理由が正しいかどうかで言い返しても、なかなか動いてはくれません。「それは理由にならないよ」と返すと、子どもは次の理由を探します。やりとりが「掃除をするかどうか」から「どちらの言い分が正しいか」にずれていき、掃除の時間だけが過ぎていきます。
大事なのは、理由の中身で勝つことではなく、
- その子がどのタイプかを見立てる
- 掃除のやり方(仕組み)と、先生の関わり方を変える
の2つです。担任時代をふり返って、私が「これは効いた」と感じているのは、先生が一緒にやることと、掃除のあとに振り返りの時間をとることでした。
シリーズ1本目の「授業中に関係ない話をする子」への回答でも、子どもの気持ちを否定せずに授業へ戻すことを書きました。今回も、根っこにある考え方は近いと思います。
シリーズ1本目では、授業中に関係ない話をする子への返し方をお答えしています。
掃除をやらない子は、ひとくくりにしない
「掃除をやらない子」と一言で言っても、その中身はさまざまです。私のクラスにも、いくつかのタイプの子がいました。
やるふりをして、しゃべったり遊んだりする子
ほうきや雑巾は持っている。でも、気づくと友だちとしゃべっていたり、ほうきで遊んでいたりする。一見サボっているように見えますが、「やらない」と決めているわけではない子も多いタイプです。
何をどこまでやればいいのかがはっきりしないと、手持ちぶさたになって、おしゃべりや遊びに流れやすくなります。
先生が見ている間だけやる子
先生が近くに来るとさっと手を動かし、離れるとまた止まる。このタイプの子は、掃除のやり方はちゃんと分かっています。分かっているけれど、「見られている」ことがやる理由になっている状態です。
理由をつけて断る子
今回の相談にあたるのが、このタイプです。「〇〇だから、やらない」と、自分なりの理由を口にします。
理由の中には、本人にとっては本当のことも、その場で思いついたものも混ざっていると思います。ただ、外から見てどちらなのかを見分けるのは難しいものです。だからこそ、理由が正しいかどうかを裁くより、「その子が動ける形」を一緒に探すほうが話が前に進みます。
「雑巾が生理的に無理」と言う子
私のクラスには、「雑巾が生理的に無理」と言う子もいました。
これは、怠けとは分けて考えたいタイプです。においや手ざわり、ぬれた感じなど、感覚の苦手さは人によって大きく違います。大人にも、どうしても触れない素材がある人はいます。それと同じで、本人の努力不足やわがままではありません。「みんなやっているんだから」と押し切るのではなく、やり方のほうを考える必要があります。
ここまでをまとめると、次のようになります。
| タイプ | 見えやすい姿 | 合いやすい関わり |
|---|---|---|
| やるふり | しゃべる・ほうきで遊ぶ | 役割をはっきり決める・先生が一緒にやる |
| 見ている間だけ | 先生が離れると止まる | 先生が一緒にやる・振り返りで認める |
| 理由をつけて断る | 「〇〇だからやらない」 | 理由を裁かず、動ける形を一緒に探す |
| 生理的に無理 | 雑巾をさわれない | やり方を変える(道具・役割) |
効いたこと①:先生が一緒にやる
私が担任時代にやってよかったと感じている一つめは、先生が一緒に掃除をすることです。
「やって」と言う側に立っていると、どうしても見張る人と見張られる人の関係になります。でも、先生がほうきを持って同じ場所をはき始めると、関係が「一緒にやる人」に変わります。
この関わり方は、タイプを問わず効きやすいと感じています。
- 見ている間だけやる子にとっては、先生がそばにいる時間が、そのまま掃除の時間になります
- やるふりの子は、隣で手を動かしている大人がいると、遊びに流れにくくなります
- 理由をつけて断る子には、「やって」ではなく「ここ、一緒にやろうか」と誘う形になるので、言い返す場面そのものが減ります
もう一つ大きいのは、先生の動きが手本になることです。ほうきをどの向きに動かすか、ごみをどこに集めるか。言葉で説明するより、隣でやって見せるほうがずっと伝わります。
とはいえ、すべての掃除場所に毎日つくことはできません。気になる班から順に入る、日によって場所を変えるなど、できる範囲で十分だと思います。
役割をはっきり決める
二つめに私がやっていたのは、役割をはっきり決めることです。
「この場所をみんなで掃除して」という頼み方だと、だれが何をするのかがあいまいになります。あいまいなところでは、やるふりや、理由をつけて手を止める余地が生まれやすくなります。
たとえば、「ほうきで前半分」「雑巾で机の列」「ちりとりとごみ捨て」のように、一人ひとりの持ち場と、終わりの形が分かるように決めておくと、子どもは自分が何をすればいいかで迷わなくなります。
理由をつけて断る子にとっても、役割がはっきりしていると話がしやすくなります。「やるかやらないか」ではなく、「この役ならできそう?」と、選べる形で声をかけられるからです。
なお、掃除の分担表や当番の回し方など、学級全体の仕組みづくりについては、別の記事にくわしくまとめています。この記事では、個別の子への関わり方に絞ってお答えしています。
班の分担や当番の回し方など、掃除の仕組みを学級全体で整える方法は、こちらの記事にまとめています。
「雑巾が無理」と言う子への対応:一人だけの特別扱いにしない
「雑巾が生理的に無理」と言う子には、ほうきの係に替えたこともありました。
ただ、ここで難しかったのが、周りの子との関係です。一人だけ特別に配慮すると、周りの子の理解が得られないことがありました。本人にとっては切実な理由でも、ほかの子からは「あの子だけ雑巾をしなくていい」と見えてしまうことがあるのです。
そこで私は、希望した子は誰でも手袋をしてよいことにしました。
この形のよいところは、雑巾が苦手な子が「特別な子」にならないことです。手袋をするかどうかは、みんなが同じように選べます。苦手な子だけが目立つことも、周りの子が不公平に感じることも起こりにくくなります。
ただし、手袋の扱いは自分のクラスだけで決めると、ほかのクラスとの兼ね合いが出てきます。「隣のクラスはいいのに、うちはだめ」となると、今度は学校の中で不公平が生まれてしまいます。私は、学校で共有したうえで取り入れました。手袋は学校で用意し、事務の先生も協力してくださったので、思っていたよりずっと早く準備できました。もし同じことを考えている方がいたら、まず学年や学校の先生に相談してから始めることをおすすめします。
それから、雑巾を嫌がる子に「少しずつ慣れようね」と無理にさわらせるのは、私はおすすめしません。苦手な感覚は、がんばれば消えるものとは限らないからです。大事なのは、その子が掃除の時間に自分の役割を持って参加できることで、雑巾をさわれるようになることではないと考えています。
効いたこと②:掃除のあとに振り返りの時間をとる
効いたと感じているもう一つは、掃除のあとの振り返りの時間です。
掃除が終わったら、班のメンバーで集合します。そこで、その日のいいところを私から声かけしました。本当は班の子どうしで言い合えるのが理想ですが、そうすると時間がかかるので、そこは先生が担っていました。たとえば、「すみのほこりまで集めてくれていたね」「ちりとりを最後までもってくれて助かった」のように、短くていいので具体的に伝えます。そして、「ありがとう」と感謝の気持ちも伝えました。
この時間が効くのは、掃除が「やらされて終わり」ではなくなるからだと思います。
見ている間だけやる子にとっては、見られているかどうかではなく、自分がやったことが認められる経験になります。理由をつけてあまり動かなかった日でも、少しでも手を動かしたところがあれば、そこを拾って伝えることができます。
注意する言葉は、どうしても「できていないところ」に向きます。振り返りの時間は、反対に「できたところ」に光を当てる時間です。毎日の掃除のあとの数分ですが、私はこの時間をとってよかったと感じています。
叱る場面は、どう位置づけるか
正直に書くと、掃除をやらない子を叱ったこともあります。ただ、ふり返って「これが効いた」と言えるのは、ここまでに書いた「一緒にやる」と「振り返り」の2つです。
叱ることを考えるときは、理由をつけて断ったこと自体よりも、次のような場面に絞って考えると、迷いにくくなると思います。
- ほうきを振り回すなど、けがにつながりそうなとき
- ほかの子の掃除を邪魔しているとき
そして、叱ったあとも、次の日の掃除ではいつも通り「一緒にやろうか」と声をかける。叱る場面と、ふだんの関わりを切り離しておくことが大切だと考えています。
明日の掃除で、まず試してほしいこと
理由をつけて掃除をやらない子がいると、先生はつい「どう言えばやらせられるか」を考えてしまいます。でも、言葉で動かそうとするほど、言い返されたときに行き詰まります。
まずは明日の掃除で、その子の班にほうきを持って入ってみてください。そして掃除のあとに、少しでもいいので、その子ががんばったところを見つけて伝えてみてください。それだけでも、掃除の時間の空気は少しずつ変わっていくはずです。
同じ班で困っているあなたへ
最後に、同じ班の子が掃除をしてくれなくて困っている人へ。
まず、その子に無理にやらせようとしなくて大丈夫です。何度言ってもやってくれないと、イライラしたり、悲しくなったりしますよね。でも、班の子に掃除をさせるのは、あなたひとりの仕事ではありません。
困っているときは、先生に相談していいんです。「〇〇さんが掃除をしてくれなくて困っています」と、そのまま伝えてかまいません。告げ口ではなく、班のことを考えての相談です。
それから、あなたがまじめに掃除をしている姿は、ちゃんと誰かが見ています。だれにも言われなくても手を動かしているあなたは、とても立派です。ひとりで抱えこまずに、周りの大人を頼ってくださいね。
掃除の場面に限らず、子どもから返ってきた言葉にどう返せばいいか迷うことは、学校では毎日のようにあります。教室で言われて困る言葉への切り返しを30の場面でまとめた『先生、その一言に傷つかなくていい』という本をKindleで出しています。Kindle Unlimitedでも読めます。
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