「今日も宿題を出していない子がいる」「何度注意しても、次の日もまた出てこない」「保護者に連絡したのに、あまり変わらない」
新任の先生なら、こんなことで困ったことがあるのではないでしょうか。
宿題の提出は毎日のことです。朝、提出物を確認するたびに同じ子の名前が並ぶ。声をかけても、叱っても、なかなか変わらない。宿題のことは、毎日くり返されるぶん、先生にとっても子どもにとっても重たくなりやすいテーマだと思います。
私は元教員として10年、そのうち担任を6年経験しました。私の学級にも、毎日宿題を出さない子は少なくありませんでした。この記事では、やってみて逆効果だったことと、「出さない理由」で分けて取り組んだ対応、そして宿題を出さない子への声かけや保護者への伝え方の例をまとめます。参考にしてみてください。
宿題を出さない子は「出さない理由」で分けて考える
宿題を出さない子がいると、つい「宿題を出さない子」とひとまとめにして、同じように注意してしまいがちです。でも、出さない理由は子どもによって違います。理由が違えば、効く方法も違ってきます。
私がやってみて、効く方法が違うと感じたのは、大きく分けて次の3つでした。
- ①わからなくて出せない子:やろうとしても、問題がわからなくて手が止まってしまう
- ②単に忘れる子:わからないわけではないけれど、宿題があること自体を忘れてしまう
- ③勉強ができる子:宿題そのものはできる子にも、合ったやり方がある
①の子に「忘れないように」と言っても、出せるようにはなりません。②の子に一緒に問題を解いても、忘れることは変わりません。まずは「この子はどのタイプかな」と考えてみることが、対応の出発点になると思います。
それぞれの対応をお話しする前に、私がやってみて逆効果だったことを先に書いておきます。
逆効果だったのは「怒り続ける」「保護者に言いすぎる」「休み時間にやらせる」
宿題を出さない子に対して、私がやってしまって逆効果だったことが3つあります。
①怒り続ける
1つ目は、怒り続けることです。出していない子を叱り続ける。でも、続けても変わりませんでした。
変わらないどころか、子どもと自分の関係が気まずくなるだけでした。宿題を出さない子も、怒られ続けて困っています。出せない理由があるのに、毎日同じことで叱られる。それでは、宿題が出せるようになる前に、先生との関係のほうが苦しくなってしまいます。
②保護者に言いすぎる
2つ目は、保護者に言いすぎることです。
保護者に相談したこともありますが、あまり効果はありませんでした。保護者に伝えて提出できるようになる子もいましたが、それはわずかでした。わずかには効果があった、というのが正直なところです。
宿題を全く出さない子の保護者も、家でいろいろ頑張っています。それでも、どうしようもなく出せない。そこへ学校から何度も「出ていません」と伝えると、保護者と自分の関係も気まずくなるだけでした。怒り続けることと同じで、続けても変わりませんでした。
③休み時間にやらせる
3つ目は、休み時間にやらせることです。
出していない宿題を、休み時間にやらせたこともあります。でもそれは、子どもにとって罰ゲームのようでした。特に、本当にわからなくて困っている子は、つらそうでした。
わからなくて出せない子にとっては、休み時間に一人で座らされても、わからないことは変わりません。周りの子が遊んでいる中で、わからない問題の前に座っている。それでは、宿題がますます「つらいもの」になってしまいます。
どれも「出さない理由」を見ていなかった
この3つに共通しているのは、出さない理由に関係なく、「出さないこと」そのものに向けた対応だという点です。叱る、保護者に伝える、休み時間にやらせる。どれも、わからない子にも、忘れる子にも、同じように向けられてしまいます。
やるべきことを最後までやらせ切ることは、もちろん大切です。ただ、やらせ切るには、子どもが「やればできる」状態になっていることが前提だと思います。指示を通してやらせ切ることについては、指示が通らないときの対処法でもまとめています。宿題の場合は、その前に「なぜ出せないのか」を見ることが必要でした。
①わからなくて出せない子には、朝か放課後に一緒に
わからなくて出せない子に、私が一番よかったと思うのは、朝早くか放課後に、教えながら一緒に進めることでした。
ポイントは、学級の子の目を気にせず取り組める時間を選ぶことです。休み時間に周りの子がいる中でやらせると、罰ゲームのようになってしまいました。朝早くや放課後なら、ほかの子の目を気にせずに取り組めます。
朝がいいか、放課後がいいかは、その子の生活リズムによります。朝は登校が早い子もいれば、ぎりぎりの子もいます。放課後は、塾や習い事がある子もいます。その子にとって無理のない時間を選ぶのがいいと思います。
そして、ただやらせるのではなく、教えながら進めました。わからなくて出せない子は、わからないところを一緒に解いていけば、宿題を進めることができます。この方法は、「わからない」という子に効果的でした。
声のかけ方(たとえばこんな言い方)
朝や放課後に誘うときは、「やっていないから残りなさい」という言い方ではなく、一緒にやろうという言い方がおすすめです。たとえばこんな言い方があります。
「宿題、わからないところがあったら一緒にやろうか。明日の朝、少し早めに来られる?」
勉強そのものへのやる気が下がっている子には、宿題以外の工夫も必要かもしれません。勉強しない子にやる気を出させる7つの方法もあわせて読んでみてください。
②単に忘れる子には、学級全体に少量の宿題を毎日出す
宿題を単に忘れる子に効果的だったのは、学級全体に、少量の宿題を毎日出すことでした。
宿題が出る日と出ない日があると、忘れやすい子は「今日はあったかな」と迷います。毎日出すことで、宿題は「あるもの」になります。毎日あるものだと考えられるようになって、出せるようになりました。
ここで大事なのは「少量」であることです。毎日出すぶん、1回の量は少なくしておきます。
授業を5分早く終えて、授業の中で宿題をする
量を少なくした理由は、もう一つあります。子どもは塾や習い事で、とても忙しいからです。
そこで私は、できるだけ授業の中で宿題をやる時間をつくりました。5分で終わるくらいの宿題を出していたので、授業を5分早く終えて、その時間に宿題をしました。
授業の中で宿題の時間をとるには、1時間の時間配分をあらかじめ考えておく必要があります。最後の5分を宿題の時間として確保しておけば、慌てずに済みます。45分の授業の配分の考え方は、45分の授業が終わらないときの時間配分で詳しくまとめています。
あわせて使える工夫
私の体験からは少し離れますが、忘れる子が多い場合は、次のような方法もあります。
- その日の宿題を、黒板の決まった場所に毎日書いておく
- 連絡帳に宿題を書く時間を、一日の終わりに毎日とる
- 朝、提出する場所と順番を決めておき、出したかどうかが子ども自身にもわかるようにする
- 家庭学習の量の目安を、学年の先生でそろえておく
宿題の内容が「見える」ようになっていると、忘れやすい子も確認しやすくなります。量の目安を学年でそろえておくと、学級ごとに宿題の量が大きく違うことも防げます。
③勉強ができる子には、答えを渡しておく
3つ目のタイプは、勉強ができる子です。この子たちに効果的だったのは、答えを渡しておくことでした。
答えを渡しておくと、解いたあとすぐに答え合わせができます。自分で解いて、すぐに丸をつけられる。それで、やる気が出ていました。
答えを渡すと「写してしまうのでは」と心配になるかもしれません。その場合は、答えを渡す子と渡さない子を分ける、という方法もあります。わからなくて出せない子には、答えよりも先に、一緒に解く時間が必要だと思います。答えを渡しておく方法は、自分で解ける子に向いた方法です。
宿題を出さない子への声かけと、保護者への伝え方
「信じてるから出してほしい」と伝える
宿題を出さない子には、「信じてるから出してほしい」と伝えていました。そして、出せたら「嬉しかった」と声をかけていました。
「信じてるから、出してほしい。」
(出せたときに)「出してくれて、嬉しかった。」
出していないことを叱るのではなく、出してほしいという気持ちを伝える。出せたときには、先生が嬉しかったことを伝える。叱ることとは、子どもへの向き合い方が違う声かけです。
このほかにも、たとえばこんな声かけがあります。
「どこで止まっちゃった?わからないところがあったら教えて。」
「全部じゃなくていいから、できたところまで出してね。」
どちらも、出していないことを責めるのではなく、出さない理由を一緒に探したり、出しやすくしたりするための言葉です。
保護者には「責めない・一緒に考える」で伝える
保護者に言いすぎることは逆効果でしたが、保護者と話す機会がまったくないわけではありません。個人懇談のように、保護者と話す場面もあります。懇談で何を話すかについては、12月の個人懇談で話す内容でまとめています。
宿題のことを伝えるときは、家でもいろいろ頑張っていることを前提にして、責めずに一緒に考える姿勢で伝えるのがおすすめです。たとえばこんな伝え方があります。
「宿題のことで、学校でもできることを考えています。おうちでは、宿題に取り組むときにどんな様子ですか。わからなくて止まっていることがあれば、学校でも一緒に見ていきたいと思っています。」
「出ていません」と結果だけを伝えるより、家での様子を聞いて、学校でできることを一緒に考える。そのほうが、保護者も話しやすくなると思います。
新任の頃の自分に伝えたいこと
最後に、新任の頃の自分に向けて書くつもりで、伝えたいことがあります。
それは、先輩をまねしようということです。
宿題については、学年や経験年数を問わず、多かれ少なかれ、みんな悩んでいます。そして、先生それぞれに、その先生独自のノウハウがあるはずです。いろいろな方法の中に、自分に合った方法がきっとあります。
私も、先輩や同僚、ときには後輩や子どもからも、いろいろな方法を吸収しました。宿題のことで困ったら、一人で抱えずに、周りの先生がどうしているかを聞いてみてください。
まとめ:怒るより、出さない理由に合わせて手を打つ
宿題を出さない子への対応をまとめます。
- 宿題を出さない理由は子どもによって違う。理由で分けて考える
- 怒り続ける・保護者に言いすぎるのは逆効果。続けても変わらず、関係が気まずくなるだけ
- 休み時間にやらせると罰ゲームのようになり、わからなくて困っている子はつらそうだった
- わからなくて出せない子には、朝早くか放課後に、教えながら一緒に進める
- 単に忘れる子には、学級全体に少量の宿題を毎日出し、「あるもの」にする
- 子どもは塾や習い事で忙しいので、5分で終わる宿題にして、授業を5分早く終えて授業の中でやる
- 勉強ができる子には答えを渡しておくと、すぐに答え合わせができてやる気が出る
- 「信じてるから出してほしい」と伝え、出せたら「嬉しかった」と声をかける
- 保護者には、責めずに一緒に考える姿勢で伝える
- 先輩をまねして、自分に合った方法を見つける
宿題を出さない子を、叱って出させようとすると、先生も子どもも保護者も苦しくなります。出さない理由を見て、その子に合った手を打つ。できそうなところから、試してみてください。

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