ブログのお悩みフォームに、こんな相談が届きました。ご本人の許可をいただき、内容が特定されないように要約して紹介します。
小学校で担任をしている若手の先生からの相談です。
クラスに、とても自由に動いたり話したりする子が2人ほどいます。その子たちがきっかけで授業が止まってしまい、思うように進まない時間があるそうです。
相談を送ってくださって、ありがとうございます。読みながら、自分が担任をしていた頃の教室を思い出しました。
私のクラスにも、授業の説明をしている途中で、まったく関係のない話を大きな声で言い出す子がいました。こちらは説明の真ん中で、ほかの子たちはその子のほうを向いてしまう。説明をもう一度最初からやり直すことになり、1コマの予定がずれていく。あの「止まる瞬間」の焦りは、今でもよく覚えています。
この記事では、そのときに私が実際にやっていたことを、次の3つに分けてお答えします。
- 関係ない話が始まった瞬間の返し方
- そもそも授業が止まりにくくなる組み立て
- 授業の外での関係づくりと、ひいきに見せない工夫
結論:止める子を「止めない」で、授業に戻す
先に結論をお伝えします。私がいちばん使っていたのは、話を止めさせるのではなく、話を「あとに回す」返し方でした。
「それはおもしろそうな話だね。あとでぜひ職員室においで。いっぱい聞くよ」
こう伝えて、すぐに授業に戻ります。
授業中に関係ない話をする子を前にすると、つい「今は関係ないでしょ」「静かにしなさい」と言いたくなります。でも、その子の話したい気持ちはそれでは消えません。むしろ、否定された分だけ、次の場面でもう一度声が大きくなることもあります。
「あとで聞くよ」は、話したい気持ちは受け止めたうえで、今は授業の時間だと線を引く言葉です。その子にとっては「聞いてもらえる約束」になり、ほかの子にとっては「先生は授業に戻った」という合図になります。止めようとして注意を重ねるより、やりとりが一往復で終わるぶん、授業が止まる時間は短くなりやすい返し方です。
関係ない話が始まった瞬間の返し方
基本形は「受け止める・あとに回す・すぐ戻る」
基本形は、次の3つを短く続けることです。
- 受け止める:「それはおもしろそうな話だね」
- あとに回す:「あとでぜひ職員室においで。いっぱい聞くよ」
- すぐ戻る:言い終わったら、そのまま説明の続きに戻る
大事なのは3つめです。返事をしたあとに「でもね、今は授業中だから……」と説明を足すと、そこからやりとりが始まってしまいます。言い終わったらすぐ、何事もなかったように授業の続きに入る。この切り替えの速さが、ほかの子の集中を戻します。
言い方は、明るく、短く。困った顔や、ため息まじりの声で言うと、同じ言葉でも「迷惑がられた」と伝わってしまいます。「おもしろそう」は本心で言えるくらいの気持ちでいると、その子の表情もやわらぎます。2人が続けて話し出したときも、一人ずつ同じ言葉で返せば十分です。返し方を一つに決めておくと、こちらも慌てずに済みます。
正直に書くと、その子が職員室に来たことは一度もありませんでした。私はまじめに注意するつもりではなく、本当に話を聞くのを楽しみにしているつもりで声をかけていましたし、来てくれたら喜んで聞くつもりでした。それでも、来ませんでした。
でも、それでいいのだと思います。この言葉の役目は、職員室に呼ぶことではなく、その子の話したい気持ちを否定せずに、授業に戻ることだからです。来なくても大丈夫。もし本当に来てくれたら、手を止めて話を聞く。「あとで聞くよ」を口先だけにしないことだけは、決めておいてください。
その場で聞いてもいいときもある
ただ、私はいつも「あとで」に回していたわけではありません。次のようなときは、その場で話を聞いていました。
- 時間に余裕があるとき
- その話を聞くことで、授業にメリハリが出ると思ったとき
たとえば、説明が続いて教室の空気が重くなっているときに、少しだけその子の話を聞いてみんなで笑うと、そのあとの集中が戻ることがあります。止まったように見えて、実は授業にとってよい「間」になるのです。
判断の目安としては、次のように考えると迷いにくいと思います。
| その場で聞いてもよいとき | あとに回したほうがよいとき |
|---|---|
| 時間に余裕がある | 説明の山場や、手順を伝えている途中 |
| 空気がゆるんで、笑いが入るとよさそう | ほかの子がようやく集中し始めたところ |
| 短く終わりそうな話 | 話が広がって戻れなくなりそう |
その場で聞くときも、「じゃあ、1分だけ聞かせて」と先に区切っておくと、授業に戻りやすくなります。
「そこまで話したいなら、どうぞ」と前に誘う方法もある
もう一つ、私が試したことがあります。授業の途中でその子が話し出したとき、「そこまで話したいなら、どうぞ」と、前に出て話す時間をとってみたことです。
結果は、その子は前に出ても話しませんでした。
授業中に関係ない話をする子の中には、「みんなに聞いてほしい」という気持ちが強い子がいます。ただ、割り込みで話すことと、みんなの前に立って話すことは別物です。いざ「どうぞ」と言われると、話せなくなる子もいます。
この方法でいちばん大事なのは、その子に恥をかかせないことです。話さなかったら、それで大丈夫。「また話したくなったら聞かせてね」で終えて、すぐ授業に戻ります。もし本当に前に出て話してくれたら、その勇気に拍手をする。
ただし、この方法は、言い方や関係次第で皮肉や「さらし者」に受け取られ、かえって悪循環を招くことがあります。前に来させるには、その子との信頼関係が前提です。ですから、これは毎回使う方法ではなく、「こういうやり方もある」と知っておくくらいでちょうどいいと思います。基本は、先ほどの「あとで聞くよ」です。
なお、話す内容がウケ狙いのふざけに寄っていく場合は、別の対応が必要になります。その場合の考え方は、こちらの記事にまとめています。
笑いを取ろうとしてふざける子への対応は、こちらの記事で詳しく書いています。
授業が止まりにくくなる組み立て
その場の返し方と同じくらい大事なのが、そもそも授業が止まりにくくなるように組み立てておくことです。私が気をつけていたのは、次の2つでした。
席を離す
一つめは、席を離すことです。
関係ない話は、近くに反応してくれる相手がいると広がりやすくなります。相談の内容のように、自由に動く子が2人いる場合はなおさらで、2人の席が近いと、片方が話し出したときにもう片方が乗ってきて、授業が止まる時間が長くなりがちです。
私は、どちらかを教卓の近くに座らせるよりも、2人の席の距離そのものを物理的に離すようにしていました。席を離しておくと、話が始まっても1人で終わりやすく、こちらも「あとで聞くよ」と返しやすくなります。席替えのときに、班や列の組み方を少し意識しておくだけでできる工夫です。
説明を短くする
二つめは、説明が長くならないようにすることです。
ふり返ると、関係ない話が飛び出すのは、たいてい私の説明が続いている時間でした。ずっと聞くだけの時間が長くなると、じっとしているのが苦手な子から先に集中が切れていきます。
説明を短く区切って、「聞く」のあとにすぐ「書く」「考える」「隣と話す」など、子どもが手や口を動かす時間を入れる。それだけで、話し出すきっかけそのものが減ります。
席を立って動き回ってしまう子がいる場合は、授業の組み立ての考え方が少し変わります。そちらはこちらの記事が参考になると思います。
授業中に立ち歩いてしまう子への指導は、こちらの記事でまとめています。
授業の外で、その子とたくさん話す
ここまでは授業中の話でしたが、私がいちばん大事だったと思っているのは、実は授業の外での関わりです。
担任時代、私は休み時間にその子とよく話していました。授業中は「あとで」に回すことが多かった分、授業の外では、こちらから話しかけるようにしていたのです。
今の私が当時の自分に助言するなら、休み時間や放課後に関わる時間をもっと意識してとりなさいと言うと思います。授業の外で関係ができると、授業中の「あとで聞くよ」も、注意も、ずっと通りやすくなるからです。
同じ「今は授業に戻ろうね」という言葉でも、ふだんよく話している先生から言われるのと、注意されるときにしか話さない先生から言われるのとでは、子どもの受け取り方がまったく違います。指導が通るかどうかは、言葉の上手さよりも、その前にどれだけ関わっているかで決まる部分が大きいのだと思います。
ひいきに見せない工夫:ほかの子にも1日1回声をかける
ただし、ここに一つ落とし穴があります。
特定の子とばかり話していると、ほかの子からは「あの子ばっかり」「自分たちはほったらかし」と見えてしまうことがあります。授業を止める子に手をかけるほど、真面目に過ごしている子が「ちゃんとしている自分のほうが見てもらえない」と感じてしまう。これは、クラス全体の空気にも関わる大事なところです。
そこで、今の私がおすすめしたいのは、ほかの子にも1日1回、少なくとも2日に1回は自分から話しかけることです。
長い会話でなくてかまいません。
- 朝、名前を呼んであいさつをする
- ノートを見て「この図、分かりやすいね」と一言返す
- 休み時間に「それ何の遊び?」と輪に入ってみる
この程度でも、「先生は自分のことも見てくれている」と感じられます。名簿にさっと印をつけておくと、話しかけ忘れている子にも気づけます。
その子に関わる時間を増やすことと、ほかの子に目を配ることは、どちらかを選ぶものではありません。両方を回せるように、「1日1回」「2日に1回」と数で決めておくと続けやすくなります。
特定の子に手がかかって、クラス全体が見られなくなっていると感じるときは、こちらの記事もあわせて読んでみてください。
特定の子に手がかかって、ほかの子まで目が届かないときの考え方は、こちらの記事にまとめています。
相談してくださった先生へ
授業が止まる時間があるのは、先生の力が足りないからではありません。話したい気持ちが強い子、じっとしているのが苦手な子がクラスにいれば、授業はどうしても止まります。それはどの先生の教室でも起きることです。
だからこそ、まずは「止まったときに、どう戻すか」を一つ決めておくと気持ちがラクになります。明日の授業で関係ない話が始まったら、「それはおもしろそうな話だね。あとで聞かせて」と返して、すぐ授業に戻ってみてください。そして休み時間に、その子の話の続きを聞いてみてください。
あわせて、ほかの子にも1日1回声をかける。この2つを続けていくうちに、その2人との関係も、クラスの空気も、少しずつ変わっていくはずです。
授業の組み立てそのものを見直したい方には、Kindleで出している『先生、授業はもっとラクに変わります』も置いておきます。「授業は『最初の5分』で9割決まる」というつかみの型や、挙手しない子を巻き込む指名の工夫など、授業を回すときに肩の力を抜くための考え方をまとめた本です。Kindle Unlimitedでも読めます。
▶ 『先生、授業はもっとラクに変わります』(Kindle版):https://www.amazon.co.jp/dp/B0H9J1JZ22
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