チャイムが鳴っても席につかない子への対応|追いかけると逆効果。学校全体の「1分前着席」と先生が時間を守ること

チャイムで座らない子 1分前・2分前・追わず 元教師のアドバイス

「チャイムが鳴ったのに、まだ立ち歩いている子がいる」「何度『座って』と言っても座らない」「全員が座るのを待っているうちに、授業の始まりがどんどん遅れていく」

新任の先生なら、こんな場面で困ったことがあるのではないでしょうか。

チャイムが鳴っても席につかない子が一人二人いるだけで、授業はなかなか始まりません。座っている子は待たされ、先生は焦り、注意する声もだんだん大きくなる。授業の最初の数分で、もう疲れてしまうこともあると思います。

私は元教員として10年、そのうち担任を6年経験しました。私が勤めていた学校にも、チャイムが鳴っても座らない子がいました。これはなかなか大変でした。この記事では、そのとき学校全体で取り組んだ「1分前着席」と、子どもにさせる以上、先生の側も徹底したこと、そしてやってみて逆効果だったことをまとめます。そのまま使える声かけやルールの伝え方の例文も載せているので、参考にしてみてください。

チャイムで座らないのは「その子だけの問題」ではない

チャイムが鳴っても座らない子がいると、どうしても「あの子をどう座らせるか」に目が向きます。でも、この問題は一人の子を相手にしているだけでは、なかなか解決しません。

理由は、チャイムで座るかどうかがその学級、その学校の「当たり前」に左右されるからです。休み時間と授業の切り替えは、毎時間、毎日くり返されます。ある先生の授業では1分前に座っていて、別の先生の授業ではチャイムが鳴ってもしばらくざわざわしている。そういう状態だと、子どもにとって「チャイムで座る」は先生ごとに違うルールになってしまいます。

私が勤めていた学校では、この問題を学校全体の取り組みにしました。言い出したのは私ではなく、先輩の先生です。その提案で、学校全体で同じルールに取り組むことになりました。

なお、授業中に立ち歩いてしまう子への対応は、授業の始まりとはまた別の視点が必要です。そちらは授業中に立ち歩く子への指導法で詳しくまとめています。

学校全体で取り組んだ「1分前着席」のルール

ルールは、とてもシンプルな2つでした。

  • 授業が終わったら、次の時間の準備を机の上に出す
  • 次の授業が始まる1分前に着席する

これを4月から全員で取り組みました。そして、子どもに守らせるだけではなく、先生の側にも守ることがありました。これはあとでお話しします。

ポイントは、「チャイムが鳴ったら座る」ではなく「1分前に座る」にしたことです。チャイムが鳴ってから座り始めると、全員がそろうまでにどうしても時間がかかります。1分前に座っていれば、チャイムが鳴った瞬間には準備がそろった状態になっています。

また、「授業が終わったら次の準備を出す」をセットにしておくと、休み時間の最後に慌てて準備をする必要がなくなります。机の上に準備が出ていれば、あとは座るだけです。

ルールの伝え方(たとえばこんな言い方)

4月にルールを伝えるときは、長い説明より、やることをはっきり言うほうが子どもに伝わりやすいと思います。たとえばこんな言い方があります。

「この学校では、2つのことをみんなでやります。1つ目、授業が終わったら、次の時間の準備を机の上に出しておくこと。2つ目、次の授業が始まる1分前には、席に座っていること。先生たちもみんなでやります。」

「先生たちもやる」と最初に伝えておくのがおすすめです。これは次の見出しでお話しする、先生側の約束につながっています。

ルールを紙に書いて教室に掲示しておく、という方法もあります。言葉で一度伝えるだけより、いつでも目に入るところにあるほうが、子ども自身が確認しやすくなります。

1分前になったら、先生みんなで声をかけて回る

ルールを決めただけでは、最初からみんなが座れるわけではありません。そこで、1分前になったら先生みんなで声をかけて回りました。

声かけは、叱るような調子ではなく、軽い呼びかけです。たとえばこんな感じです。

「1分前だよー、座ろうねー」

これを、担任だけでなく、そのとき廊下や教室の近くにいる先生みんなでやります。一人の先生が一つの学級で言うのと、学校のあちこちで同じ言葉が聞こえるのとでは、子どもの受け取り方も違ってくると思います。「この学校ではそういうものなんだ」という空気が、言葉で説明しなくても伝わりやすくなります。

呼びかけの言葉は、学校の中でそろえておくのがおすすめです。先生によって「早く座りなさい」「もう時間だよ」「着席!」とばらばらだと、ルールそのものがあいまいに見えてしまいます。同じ言葉を、同じ軽さで、毎回くり返す。これだけでも、取り組みとしての一体感が出ます。

子どもにさせる以上、先生も時間を守る

この取り組みで、私がいちばん大事だと思っているのがここです。子どもに「1分前に座りなさい」と言う以上、先生の側も徹底したことが2つありました。

①必ず授業の2分前には前に立つ

1つ目は、必ず授業の2分前には教室の前に立つことです。チャイムと同時に授業を始められるようにするためです。

子どもが1分前に座っているのに、先生がチャイムが鳴ってから教室に入ってくる。これでは、子どもにだけ時間を守らせていることになります。先生が2分前に前に立っていれば、子どもが座るころには、先生はもう授業を始める準備ができています。

②終わりのチャイムが鳴ったら、途中でも切り上げる

2つ目は、終わりのチャイムが鳴ったら、授業の途中でもそこで切り上げて休み時間にすることです。

授業の途中で切り上げるのは、勇気がいることです。「あと少しでまとめまで行けるのに」と思う場面もあるはずです。それでも、そこで切り上げます。授業を延ばすと、その分だけ子どもの休み時間が削られます。休み時間が短くなれば、次の時間の準備をして1分前に座ることも難しくなってしまいます。

チャイムで切り上げるためには、1時間の中でどこに何分使うかを、あらかじめ考えておくのがおすすめです。まとめの時間を最初から確保しておけば、途中で切り上げることになっても慌てずに済みます。

「時間を守るのは当たり前」を言葉ではなく姿で伝える

先生がここまで時間を守ることのねらいは、時間を守ることは大切なんだと、子どもに気づいてもらうことです。

「時間を守るのは常識なんだよ」と言葉で説明することもできます。でも私たちは、それを言葉で説明するのではなく、先生が徹底して時間を守る姿から感じ取ってもらうイメージで取り組んでいました。始まりも終わりも、先生がチャイムを守る。その姿を毎日見るなかで、「時間は守るものなんだ」と子ども自身が感じ取ってくれる。そんなイメージです。

逆効果だったのは「座らせようと追いかけること」

学校全体で取り組んでも、それでも座らない子はいました。ここからは、私がやってしまった失敗の話です。

それでも座らない子を、座らせようと徹底的に追いかけて、座るように言いました。

結果は逆効果でした。先生から逃げることが、ゲームのようになってしまったのです。追いかければ追いかけるほど、その子にとっては「先生から逃げる」こと自体が目的になっていきました。そして、余計に崩れてしまいました。

なぜ追いかけると逆効果になるのか

振り返ってみると、追いかけることで、先生と子どもの関係が「追う側」と「逃げる側」になってしまっていたのだと思います。

追いかける先生がいるから、逃げることに意味が生まれます。先生が本気になればなるほど、逃げることのおもしろさも増していく。周りの子から見ても、先生と一人の子の追いかけっこは、授業よりずっと目立ちます。そうなると、授業の始まりを整えるつもりが、かえって授業の始まりを乱すことになってしまいます。

座らない子を前にすると、「放っておいたら、ほかの子も座らなくなるのではないか」と不安になるかもしれません。でも、追いかけて座らせようとすることは、少なくとも私の場合はうまくいきませんでした。

一番効いたのは「声をかけるだけ」と「チャイムと同時に始める」

では、何が一番効いたのか。それは、追いかけずに、ただ声をかけるだけにすること。そして、チャイムと同時に授業を始めることでした。

声をかけるのは、1分前の呼びかけと同じ軽さで十分です。たとえばこんな言い方です。

「1分前だよー、座ろうねー。」

「チャイム鳴ったよ。授業始めるね。」

声をかけたら、それ以上は追いかけません。そして、チャイムが鳴ったら、座っている子たちと一緒に授業を始めます。全員がそろうまで待つのではなく、時間になったら始める。ここで先生が待ってしまうと、「座らなくても授業は始まらない」ことになってしまうからです。

2分前に前に立つという先生側の約束は、ここで生きてきます。先生がすでに前に立って準備ができているからこそ、チャイムと同時に迷わず始められます。

席についたあと、ノートや教科書の準備までそろえてから始めたいときは、「写した人から立つ」で全員そろって授業を始める方法も参考になると思います。

授業の始まりを「入りやすく」する工夫

私の体験からは少し離れますが、チャイムと同時に始めるときに、次のような工夫を組み合わせる方法もあります。

  • 授業の冒頭に、毎回同じ短い活動を置く(前の時間の復習を1問だけ、など)
  • 時計やタイマーを、子どもから見える場所に置いておく
  • 1分前に座れていた子に、「準備ばっちりだね」と短く声をかける

毎回同じ活動から始まるとわかっていれば、子どもは見通しを持って席につきやすくなります。授業の最初に短い活動を入れる考え方は、月曜1時間目に子どもが集中しないときの対策も参考になると思います。また、教室移動や整列が遅い場合も、注意を重ねるより仕組みで整えるという考え方は同じです。整列・移動が遅い学級へもあわせて読んでみてください。

新任の頃の自分に伝えたいこと

最後に、新任の頃の自分に向けて書くつもりで、伝えたいことがあります。

それは、困ったら先輩や学校全体に相談することです。

チャイムで座らない子への対応は、一人の先生が一つの学級だけで頑張っても、なかなか変わりません。でも、学校が一丸となって取り組めば、一人ひとりの力が小さくても、たいていのことはうまくいきます。学校や学級が変わってきます。

とはいえ、新任の先生がいきなり「学校全体でやりましょう」と言い出すのは、ハードルが高いと思います。その場合は、まず同じ学年の先生や、身近な先輩の先生に相談してみるのがおすすめです。たとえばこんな言い方があります。

「チャイムが鳴っても座らない子がいて、授業がなかなか始められないんです。先生の学級では、どんなふうにしていますか。」

相談してみると、同じことで困っている先生がいたり、学年や学校として取り組めることが見えてきたりします。最初から大きな取り組みにしなくても大丈夫です。相談することから始めてみてください。一人で抱えすぎないでほしいと思います。

まとめ:追いかけずに、みんなで時間を守る

チャイムが鳴っても席につかない子への対応をまとめます。

  • チャイムで座るかどうかは、その子だけでなく学級・学校の「当たり前」に左右される
  • 「授業が終わったら次の準備を机の上に出す」「1分前に着席する」を4月から全員で取り組む
  • 1分前になったら、先生みんなで「1分前だよー、座ろうねー」と軽く声をかけて回る
  • 先生も、授業の2分前には前に立ち、終わりのチャイムが鳴ったら途中でも切り上げる
  • 「時間を守るのは当たり前」は、言葉ではなく先生の姿で伝える
  • 座らない子を追いかけると、逃げることがゲームになって逆効果
  • 追いかけずに声をかけるだけにして、チャイムと同時に授業を始める
  • 困ったら、先輩や学校全体に相談する

座らない子を一人で何とかしようとすると、先生も子どもも苦しくなります。先生がまず時間を守り、学校のみんなで同じことに取り組む。そのほうが、一人で追いかけるよりずっと遠くまで行けると思います。できそうなところから、試してみてください。

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