「発問しても、答えが一言で終わってしまう」「せっかく発言してくれたのに、次につなげられない」「誰も答えない沈黙が怖くて、つい自分で答えを言ってしまう」
新任の先生なら、こんな場面で困ったことがあるのではないでしょうか。
準備した発問を投げかけて、子どもが答えてくれる。「正解です」と言って次へ進む。授業は進んでいるのに、なんとなく子どもの考えが深まっていない気がする。逆に、誰も答えないまま数秒たつと、その静けさに耐えられなくなって、ヒントを出したり答えを言ったりしてしまう。どちらも、多くの先生が通る道だと思います。
私は元教員として10年、そのうち担任を6年経験しました。初任の頃は、発問のあとの沈黙に何度も焦りました。この記事では、そのあと私が実際にやっていた発問のあと5〜8秒待つこと、子どもの答えを「なるほど」と受けること、そして「なんでそう思ったの?」と問い返すことを中心にまとめます。そのまま使える問い返しの言葉の一覧も載せているので、参考にしてみてください。
発言が広がらないのは、発問の「あと」に原因があることが多い
発言が一言で終わってしまうと、「発問の仕方が悪いのかな」と考えがちです。もちろん、発問そのものの工夫は大切です。どんな問いを用意するかについては、発問ひとつで授業が激変する 問いの作り方で詳しくまとめています。
ただ、よい発問を用意しても、そのあとの扱い方しだいで、子どもの考えは広がりもすれば、そこで止まりもします。発問のあとに先生がやることは、大きく分けると次の3つです。
- 子どもが考えるあいだ、待つ
- 出てきた答えを、受ける
- その答えから、もう一歩問い返す
この記事で扱うのは、この「発問のあと」の部分です。発問を投げかけたあと、すぐに次の説明に移ってしまったり、出てきた答えに「正解」「違う」とだけ返して終わったりすると、子どもにとっては「答えを当てればそれで終わり」になってしまいます。考えを広げるきっかけは、むしろ答えが出たあとにあります。
なお、当てても答えない子、無言になってしまう子への対応は、また別の視点が必要です。そちらは当てても答えない・無言の壁に悩む新任教師へ 切り返し3パターンで紹介しています。この記事は、子どもが答えてくれた発言を、どう次につなげるかの話です。
発問のあとは、5〜8秒待つ
私が意識していたのは、発問のあと、5〜8秒待つことでした。
5〜8秒というと短く感じるかもしれません。でも、授業中に先生が黙って立っている5秒は、思っている以上に長く感じます。教室がしんとして、子どもと目が合わないまま時間だけが過ぎていく。初任の頃の私は、この時間に何度も焦りました。焦って問いを言い直したり、ヒントを足したり、先生が答えを言ってしまったりすると、子どもが考える時間はそこで終わってしまいます。
けれど、発問した直後に手が挙がらないのは、子どもが考えていないからとは限りません。問いを聞いて、自分の中で考えて、言葉にする。そのためには、どうしても少し時間がかかります。先生がすぐに言葉を足してしまうと、考えている途中の子は、そこで考えるのをやめてしまうかもしれません。
待っているあいだにできること
私は待っているあいだ、こんなふうに声をかけていました。
「次、ほかの人に当たるかもしれないから、この間に考えといてね。」
そう言いながら、学級全体を目で見ていました。最初に当てた子だけでなく、全員が「自分も当たるかもしれない」と思って考える時間になります。先生が黙って待つだけより、待つ理由がはっきりするので、先生自身も沈黙に耐えやすくなります。
このほかにも、次のような方法があります。
- 待っているあいだに問いを言い直さない(言い直すと、子どもは最初から考え直すことになる)
- 問いを黒板に書いておき、子どもがいつでも見返せるようにする
「待つ」は何もしない時間ではなく、子どもが考えるための時間を守っている、と考えると少し気持ちが楽になると思います。
話し合いの前には、1分ほど書く時間をとる
関連して、私がやっていたことがもうひとつあります。話し合いの前に、1分ほど、各自ノートに考えを書く時間をとることです。これをするようにしてから、話し合いの質が変わりました。
いきなり「どう思う?」と聞かれるより、一度自分の考えを書いてからのほうが、言葉にしやすくなります。発問のあとに5〜8秒待つのと同じで、考える時間を先に保証しておくという点では共通しています。話し合い活動の進め方全体については、話し合い活動 7つの極意も参考になると思います。
出てきた答えは、まず「なるほど」で受ける
子どもが答えてくれたら、私はまず「なるほど」と受けていました。そして、そこから広げていました。
「なるほど」は、正しいとも間違っているとも言っていない言葉です。答えを聞いた、受け取った、ということだけを伝えます。ここで「正解」「惜しい」とすぐに判定してしまうと、子どもの関心は「合っていたかどうか」に向きます。正解が出た時点で、ほかの子も「もう答えは出た」と考えるのをやめてしまうかもしれません。
いったん「なるほど」で受けておくと、その答えをもとに、もう少し話を続けることができます。受けてから広げる。この順番が大事だと思っています。
「なるほど」のほかにも、受ける言葉にはいろいろな言い方があります。たとえばこんな言い方です。
「そう考えたんだね。」
「〇〇ということかな。」(子どもの言葉をそのままくり返す)
子どもの言葉をそのままくり返すと、本人にも周りの子にも、発言の中身がもう一度届きます。声が小さくて周りに聞こえなかったときにも使える方法です。
「なんでそう思ったの?」と問い返す
受けたあとに私がよく使っていたのが、「なんでそう思ったの?」という問い返しです。この問い返しをすると、子どもの考えが深まりました。
最初に出てくる答えは、結論だけの短い言葉であることが多いと思います。でも、その子の頭の中には、そう考えた理由やきっかけがあるはずです。「なんでそう思ったの?」と聞くことで、結論の奥にある考えを、言葉にして出してもらうことができます。理由を話そうとすると、子ども自身も自分の考えを整理し直すことになります。
問い詰める調子にならないように
気をつけたいのは、言い方です。同じ「なんで?」でも、強い調子で聞くと、子どもは「間違えたから聞かれている」と受け取ってしまうかもしれません。
そこでおすすめなのが、正解の答えにも、そうでない答えにも、同じように問い返すことです。正しい答えのときだけ理由を聞く、間違っているときだけ理由を聞く、という偏りがあると、子どもは問い返されたこと自体で「合っているかどうか」を読み取ろうとします。どの答えにも同じ調子で「なんでそう思ったの?」と聞いていれば、理由を話すことが当たり前になっていきます。
また、「なるほど」で受けてから問い返す、という順番もポイントです。いきなり「なんで?」と聞くより、一度受け止めてから聞くほうが、責められている感じが出にくくなります。
「なんとなく」と返ってきたら
「なんでそう思ったの?」と聞くと、「なんとなく」と返ってくることもあります。そんなとき私は、その子をそれ以上問い詰めずに、学級に向けてこう聞いていました。
「〇〇さんの考えに、付け足しできる人?」
本人がうまく言葉にできなくても、ほかの子が理由を足してくれれば、その子の考えは学級の中で生きます。「なんとなく」で止まった子に何度も「なんで?」と聞くより、周りの力を借りるほうが、その子も気持ちが楽になると思います。
そのまま使える問い返しの言葉
ここでは、発言を広げるための問い返しの言葉を、ねらいごとにまとめます。私が実際によく使っていたのは「なるほど」「なんでそう思ったの?」「たとえば?」「具体的に?」「〇〇さんの考えに付け足しできる人?」ですが、それ以外にも、たとえばこんな言い方があります。教科を問わず使える言葉を選んでいるので、学級の様子に合わせて使いやすいものを試してみてください。
理由を聞く
- 「なんでそう思ったの?」
- 「どうしてそう考えたのか、教えてくれる?」
- 「そう思ったきっかけは何かな?」
具体的にしてもらう
- 「たとえば?」
- 「具体的に?」
- 「もう少しくわしく言うと、どういうこと?」
- 「〇〇って、どういう意味で使った?」
確かめる・言い換えてもらう
- 「〇〇ということで合ってる?」
- 「別の言葉で言うとしたら、どうなるかな?」
ほかの子につなぐ
- 「ほかの人はどう?」
- 「〇〇さんの意見に付け足せる人はいる?」
- 「〇〇さんが言ったこと、自分の言葉で言える人?」
比べる・別の見方を出す
- 「〇〇さんと△△さんの考え、似ているところはどこだろう?」
- 「違う考えの人はいる?」
- 「反対の立場から考えると、どうなるかな?」
全部を使いこなそうとする必要はありません。最初は「なるほど」で受けて「なんでそう思ったの?」と問い返す、この2つだけでも十分だと思います。慣れてきたら、「たとえば?」や「ほかの人はどう?」を少しずつ足していく、というくらいの進め方がちょうどいいのではないでしょうか。
一人の発言を、学級全体に広げる
問い返しで一人の考えが深まったら、次はそれを学級全体に広げていくこともできます。ここからは私の体験からは少し離れますが、次のような方法もあります。
- 発言を黒板に書く:出てきた意見を短く板書しておくと、あとから「この意見とこの意見を比べてみよう」とつなげやすくなる
- ペアで一度話させる:誰かの発言を受けて、「今の意見について、隣の人と30秒話してみて」と、全員が考える時間をつくる
- 「付け足し」や「反対意見」を聞く:一人の発言で終わらせず、ほかの子の考えと重ねていく
どれも、一人の発言を「先生と一人の子のやりとり」で終わらせず、学級全体の考える材料にしていく工夫です。発言する子がいつも同じになってしまう場合の工夫は、発言する子がいつも同じ 挙手しない子を巻き込む工夫5つでまとめているので、あわせて読んでみてください。
新任の頃の自分に伝えたいこと
最後に、新任の頃の自分に向けて書くつもりで、伝えたいことがあります。
初任の頃の私は、発問のあとの沈黙に何度も焦っていました。
今は、もう焦りません。5〜8秒待つ。答えが出たら「なるほど」と受ける。そして「なんでそう思ったの?」と問い返す。やっていることはとてもシンプルです。
最初から上手に待てなくても大丈夫です。まずは発問のあと、心の中で5秒数えてみる。それだけでも、授業の見え方が少し変わってくると思います。
まとめ:待って、受けて、問い返す
子どもの発言を広げる問い返しについてまとめます。
- 発言が広がらないのは、発問の「あと」の扱い方に原因があることが多い
- 発問のあとは5〜8秒待つ。沈黙は子どもが考えている時間
- 話し合いの前には、1分ほど各自ノートに考えを書く時間をとる
- 出てきた答えは、正解・不正解を判定する前に「なるほど」で受ける
- 受けたら「なんでそう思ったの?」と問い返し、結論の奥にある考えを言葉にしてもらう
- 問い返しは、どの答えにも同じ調子で。問い詰める感じにならないように
- 「たとえば?」「ほかの人はどう?」など、ねらいに合わせて問い返しの言葉を少しずつ増やす
- 発言を板書したり、ペアで話させたりして、一人の考えを学級全体に広げる方法もある
発問は、投げかけたところで終わりではありません。待って、受けて、問い返す。その積み重ねで、一言で終わっていた答えが少しずつ広がっていくと思います。できそうなところから、試してみてください。

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