「演習の時間になっても、問題を解かずに座っている子がいる」「声をかけても、手が止まったまま動かない」「『早くやって』と言っても、何も変わらない」
新任の先生なら、こんな場面で困ったことがあるのではないでしょうか。
説明を終えて「では、問題をやってみましょう」と声をかける。多くの子が鉛筆を動かしはじめる中で、何人かの手が止まっている。机の間を回って声をかけても、なかなか動き出さない。多くの先生が通る場面だと思います。
私は元教員として10年、そのうち担任を6年経験しました。この記事では、授業中に手が止まる子を3つのパターンに分けて考えることと、パターンごとの対応、そしてそのまま使える声かけの例をまとめます。参考にしてみてください。
手が止まる理由は1つではない:3つのパターン
問題を解かない子がいると、つい「やる気がないのかな」とひとまとめにして、同じように声をかけてしまいがちです。でも、手が止まっている理由は、子どもによって違います。
私は、授業中に手が止まる子を、大きく次の3つに分けて考えています。
- ①わからない子:問題がわからない、解けない、何がわからないのかもわからない
- ②今何をするのかわからない子:解き方は知っているけれど、今どの問題をどうやればいいのかがわからない
- ③やりたくない子:気分がのらない、ハードルが高く感じる、声に出したり発言したりするのが嫌だ
①の子に「集中して」と言っても、わからないことは変わりません。②の子に解き方を教え直しても、本人はすでに知っています。③の子に解き方を説明しても、やりたくない気持ちはそのままです。まずは「この子はどのパターンかな」と考えてみることが、対応の出発点になると思っています。
宿題を出さない子についても、同じように「出さない理由」で分けて考える方法を宿題を出さない子への対応でまとめています。この記事は、授業中の演習や課題の時間に手が止まる子に絞った話です。
3パターンの見分け方のヒント
とはいえ、手が止まっている子が3つのうちどれなのかは、パッと見ではわかりません。どの子も、見た目は「鉛筆を持ったまま止まっている」だけだからです。
そのうえで、見分けるときの手がかりになりそうなことを、一般的なヒントとしてまとめておきます。
| パターン | その子の様子 | 机の上・ノート |
|---|---|---|
| ①わからない | 問題をじっと見ている、何度も読み返している、周りの子のノートをちらちら見る | 問題は写してあるが、途中で止まっている/書いては消した跡がある |
| ②何をするかわからない | きょろきょろしている、周りの子が何をしているかを見ている、黒板と手元を見比べている | 教科書やノートが違うページで開いている/どの問題番号か書かれていない |
| ③やりたくない | 問題から目をそらしている、ほかのことをしている、声をかけると表情がかたくなる | ノートが閉じたまま、または開いただけで何も書いていない |
ただし、これはあくまで目安です。わからないことを隠すために、ほかのことをしている子もいます。1回見ただけで決めつけないほうがいいと思います。
見分ける土台は、普段の観察
だからこそ、普段からその子を観察し、ていねいにサポートしておくことが大切だと思っています。
前の時間はどの問題で止まっていたか。どの活動のときは動いていたか。声をかけたときにどんな顔をしたか。そういう積み重ねがあると、手が止まっている姿を見たときに「この子は、たぶん①かな」と見当がつけやすくなります。普段の様子を知らないまま、その場だけで見分けようとすると、どうしても的を外しやすくなります。
①わからない子には、始めに全体でやり方を確認しておく
①の「わからない」に対しては、手が止まってから対応するより、全く分からない子がいなくなるように、先に手を打っておくことが大切だと思っています。
演習の前に、全体でやり方を確認する
演習に入る前に、学級全体でやり方を確認しておく。1問目を全員で一緒に解いてから、残りを各自でやる、という流れです。
その際、黒板にやり方を示しておくのがおすすめです。説明を聞いたときはわかったつもりでも、自分で解きはじめると、手順を忘れてしまう子がいます。黒板にやり方が残っていれば、途中で止まっても、顔を上げれば確かめることができます。
ヒントカードを用意しておく
ヒントカードのようなものを用意しておくのもいいと思います。たとえば、解き方の手順を短く書いたもの、例題と解き方を書いたものなどです。わからない子が「先生、わかりません」と言いに来なくても、自分から取りに行けるようにしておくと、手が止まる時間を短くできます。
それでも止まる子には、個別に
全体で確認しても、わからない子はいます。そのときは、個別に一緒に解いていくことになります。
授業の場面ではありませんが、私は宿題がわからない子には、朝早くか放課後に、学級の子の目を気にせず取り組めるときに、教えながら進めていました。周りの子がいる中で「わからない」と言うのは、子どもにとって勇気がいることです。授業中に机の横で教えるときも、その子が周りの目を気にしすぎないような声の大きさや距離を意識しておくといいと思います。
声をかけるときは、たとえばこんな言い方があります。
「どこまでわかった? ここまでは合ってるよ。次はどうしようか。」
わからない子は、どこがわからないのかを言葉にできないことがよくあります。できているところから一緒にたどると、止まっている場所が見つけやすくなります。
②何をするかわからない子には、モデリングと「全員そろえる」工夫
②の子は、解き方は知っています。わからないのは「今、何をすればいいか」です。どのページの、どの問題を、どこに書くのか。終わったら何をするのか。ここがあいまいなままだと、解ける子でも手が止まります。
活動の前に、一度モデリングをする
私は、活動の前に一度モデリングをすることが必要だと思っています。先生と子どもでもいいので、一度やり方ややりとりを見せておく、ということです。
言葉で説明するだけより、「1問目はこう書いて、終わったらこうする」と目の前でやって見せたほうが、子どもは何をするのかがはっきりわかります。ペアで確かめ合う活動なら、先生と子ども一人で、実際のやりとりを一度やってみせる。それだけで、「何をするかわからない」で止まる子は減らせると思います。
モデリングは、①の「わからない」を防ぐ意味でも役に立ちます。やり方を一度見ておくことで、解き方そのものの確認にもなるからです。
「写した人から立つ」「開いた人から座る」で全員をそろえる
今何をするかを学級全員でそろえる方法として、私が授業のはじめにやっていたことがあります。
まず、「タイトルとめあてを写した人から立つ」。次に、「教科書○○ページを開いた人から座る」。このとき、黒板にこっそりページ番号を書いておきます。慣れた頃には、「開いた人から座る」と言うだけで、ほとんどの子がすぐに座るようになりました。
立つ・座るという動きがあると、誰がまだ準備できていないかが先生にもすぐわかります。黒板にページ番号があれば、聞き逃した子も自分で確かめられます。演習に入るときも、やる問題の番号や終わったらすることを黒板に書いておくと、②の子は自分で確かめて動き出せると思います。
板書を写すのに時間がかかる子への配慮については、板書を写すのが遅い子への対応でくわしくまとめています。
③やりたくない子には、ハードルを下げる
③の「やりたくない」は、3つの中で一番対応が難しいパターンだと思っています。わからないわけでも、何をするかわからないわけでもない。それでも手が動かない。理由も、気分がのらない日もあれば、問題がたくさん並んでいて最初からうんざりしている場合もあります。
「まず1問だけ」「どっちからやる?」
勉強に向かわない子に、私は「まず1問だけ」や「どっちからやる?」と声をかけていました。そうすると、子どもが動きました。
「まず1問だけ、やってみよう。」
「どっちからやる?」
「全部やりなさい」と言われると、やりたくない子には問題の数がそのまま壁になります。「まず1問だけ」なら、始めるハードルが下がります。「どっちからやる?」は、やるかやらないかではなく、どちらからやるかを子どもに選んでもらう言い方です。
発言のハードルが高いなら、全体読みをたくさんする
③の中には、問題を解くこと自体よりも、口に出すこと、発言することのハードルが高い子もいます。答えを声に出して言う活動や、ペアで話す活動になると手が止まる、というパターンです。
そういう子がいるときは、全体読みをたくさんするのがいいと思っています。問題文や大事な言葉を、学級全体で声をそろえて読む。全員で読むので、一人だけ目立つことがありません。声に出すことに少しずつ慣れていく、そのための場をたくさんつくっておく、という考え方です。
考える時間を待ち、問い詰めない
発言の場面では、私は発問のあと5〜8秒待っていました。待つ間は、「次、ほかの人に当たるかもしれないから、この間に考えといてね」と言いながら、学級全体を見ていました。
また、当てた子から「なんとなく」と返ってきたときは、その子を問い詰めずに「〇〇さんの考えに付け足しできる人?」と学級に聞いていました。発言のハードルが高い子にとって、「なんで?」と何度も聞かれるのは負担が大きいと思います。待つことと、問い詰めずに周りにつなぐこと。どちらも、その子が次も手を止めずにいられるための工夫です。
当てても答えない、無言になってしまう場面については、当てても答えない・無言の壁に悩む新任教師へでくわしくまとめています。勉強そのものへのやる気が下がっている子には、勉強しない子にやる気を出させる7つの方法もあわせて読んでみてください。
やってしまいがちなNG対応
手が止まっている子への対応で、新任の頃にやってしまいがちなことも書いておきます。
- 手が止まっている子全員に、同じ声かけをする:「早くやって」「集中して」は、どのパターンの子にも同じように向けられてしまいます。理由が違うのに声かけが同じでは、なかなか変わりません
- ①の子に「早くやって」と急かす:わからない子は、急かされてもわかるようにはなりません。かえって「わからない」と言い出しにくくなってしまいます
- ③の子を全体の前で注意する:やりたくない気持ちがある子を学級全体の前で注意すると、さらに意地になったり、気持ちが閉じてしまったりしやすくなります
どれも、手が止まっている「理由」ではなく、手が止まっていること「そのもの」に向けた対応だという点で共通しています。
新任の頃の自分に伝えたいこと
最後に、新任の頃の自分に向けて書くつもりで、伝えたいことがあります。
初任の頃の私は、クラスを回すだけで手一杯で、勉強に向かわない子まで手が回りませんでした。
だからこそ伝えたいのは、特に③が難しい。だからこそ、よく観察しようということです。
何の活動のときに、やりたくなくなるのか。それをメモして記録していくと、解決策も見えてきます。たとえば「書く活動のときは動くけれど、声に出す活動になると止まる」「問題の数が多いプリントのときに止まる」といったことが見えてくれば、その場面に合わせた手を考えることができます。
そして、解決策がわからなくても大丈夫です。「こういう場面のときにやってくれない」と、先輩に話してみよう。メモがあれば、具体的に相談できます。きっと力になってくれます。一人で抱えるより、周りの先生と一緒に考えたほうが、その子に合った手が見つかりやすいと思います。
まとめ:手が止まる理由を見分けて、対応を変える
授業中に問題を解かない子、手が止まる子への対応をまとめます。
- 手が止まる理由は1つではない。「わからない」「今何をするかわからない」「やりたくない」の3つに分けて考える
- どのパターンかはパッと見ではわからない。普段から観察し、ていねいにサポートしておくことが土台
- ①わからない子:始めに全体でやり方を確認し、黒板にやり方を示しておく。ヒントカードを用意するのもいい
- ②何をするかわからない子:活動の前に一度モデリングをする。「写した人から立つ」「開いた人から座る」で全員をそろえる
- ③やりたくない子:「まず1問だけ」「どっちからやる?」でハードルを下げる。発言のハードルが高いなら全体読みをたくさんする
- 全員に同じ声かけをする、①の子を急かす、③の子を全体の前で注意する、は逆効果になりやすい
- ③は特に難しい。何の活動のときにやりたくなくなるのかをメモし、わからなければ先輩に話してみる
手が止まっている子に「早くやって」と言うのは簡単です。でも、その子が止まっている理由は、一人ひとり違います。理由を見て、その子に合った手を打つ。できそうなところから、試してみてください。

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