「この子の所見、課題をどこまで書いていいんだろう」
通知表の所見で手が止まるのは、書くことがない子だけではありません。書くことが多すぎる子もいます。授業中の私語、友達とのいざこざ、出しそびれた提出物。何度も声をかけた子ほど、思い浮かぶのは課題の場面ばかりです。
マイナス面をありのまま書けば保護者を傷つけそうで、ぼかしすぎると嘘になる。課題が多い子、気になる子の所見は、「何を書くか」より「どう書くか」で迷う所見です。
私自身は担任時代、所見のことで管理職に直されたことも、保護者から何か言われたことも、特にありませんでした。ただ、何も言われなかったことと、伝わっていたことは別です。読んだ保護者が黙って閉じてしまえば、どう受け取られたのかは先生には分かりません。
この記事では、「課題+手立て+伸び」の型と、言い換え表19組、文例10をまとめました。2学期制の後期にも使えます。目立たず書くことが見つからない子については、前回の記事で扱っています。
書くことが見つからない子の所見は、こちらの記事で3分メモ法と文例20を紹介しています。
成績処理から所見までの通知表づくり全体の段取りは、こちらの記事にまとめています。
通知表の所見で課題をそのまま書くと、何が起きるか
メモに書くぶんには問題のない「私語が多い」も、そのまま所見に移すと困ったことが起きます。
子ども本人が読む
所見は子ども本人も読みます。「授業中の私語が目立ちます」と書かれた子は、自分が先生からそう見られていると知ります。その一文が行動を変えるきっかけになるとは限らず、かえって「どうせ自分は」と思わせてしまうこともあります。
家で叱られる材料になる
課題だけが書かれた所見は、保護者には「学校で迷惑をかけている」という知らせに見えます。しかも「指示に従えないことがあります」のような言い切りには場面も頻度も入らないので、読んだ側はいちばん悪い状態を想像します。その夜、家で長いお説教が始まる。先生が望んでいたのは、そういう結果ではないはずです。
かといって、課題を書かないのもまずい理由
では、よいところだけ書けばいいのかというと、そうでもありません。
「学校では問題ない」と受け取られる
所見がほめ言葉だけだと、保護者は「学校ではうまくやれている」と読みます。そのあとの面談で課題を伝えると、「通知表ではほめてもらっていたのに、急にどうして」と、先生の言葉への信頼が揺らぎます。
その子が乗り越えつつあることまで消える
課題を書かないと、その子が学期中に変えてきた部分も書けなくなります。提出物が出せるようになった、話を最後まで聞いてから動けるようになった。こうした伸びは、もとの課題があってこその価値です。課題を消せば、その子のいちばんの頑張りも一緒に消えます。
課題を書くかどうかは、「伸びとセットで書けるか」で決めるのがおすすめです。書けるなら書く。まだ伸びが見えないなら、面談や連絡帳で伝える。この線引きがあると、迷う時間が減ります。
課題は「課題+手立て+伸び」の3点セットで書く
所見では、次の3つを1つの流れで書きます。
| 部分 | 書くこと | 書き出しの例 |
|---|---|---|
| 課題 | 学期中に実際にあった場面を、事実だけ短く | 〇〇の時間には、〜する場面が見られました |
| 手立て | 先生が実際にしたこと、本人と決めたこと | そこで、〜という約束をつくり |
| 伸び | 手立てのあとに見えた変化 | 〜できる場面が出てきています |
課題の部分は、過去形で書くのがポイントです。「〜できません」と現在形で書くと、今もずっとそうだと読まれます。「〜する場面が見られました」なら、学期中の一時期の事実として伝わります。
たとえば、メモに「板書を写すのが遅い。授業の終わりまでに写しきれない」とある子なら、こうなります。
課題だけの文(避けたい)
板書をノートに写すのが遅く、時間内に書き終えられません。
言い換えすぎた文(面談とずれる)
一字一字、とても丁寧にノートを書いています。
型に当てはめた文
〇〇の学習では、板書を写すことに時間がかかり、自分の考えを書く時間が足りなくなる場面が見られました。そこで、写す部分に印をつけて量を絞るようにしたところ、11月には自分の考えを書く欄まで書き進められる日が出てきています。
課題で始めて伸びで終えるので、課題を書いていても、読み終えて残るのは「伸びてきている」という印象です。
課題は1人につき1つに絞る
課題が2つ以上並ぶと、どれだけ手立てと伸びを添えても、「問題の多い子」という印象しか残りません。この学期にいちばん手立てを重ね、変化も見えたものを1つだけ選び、残りは面談で伝えます。
伸びは「事実に合う強さ」の言葉を選ぶ
伸びを盛ると、所見はそこで嘘になります。変化の大きさに合わせて言葉を選んでください。
| 実際の変化 | 使う言葉の目安 |
|---|---|
| 1〜2回見られた | 〜する姿も見られました/〜する場面が出てきました |
| 回数が増えてきた | 〜する日が増えてきました |
| ほとんどの日でできている | 〜できる日がほとんどになりました |
| すっかり定着した | 〜できるようになりました |
迷ったら一段弱いほうの言葉を選びます。保護者が家で「できるようになったんだって?」と聞いたときに、本人が困らない強さにしておきます。
伸びがまだ見えないときは
変化がまだ見えないときは、「伸び」の代わりに「〜という方法を本人と決め、毎日続けています」と取り組み始めたことを書きます。手立てもまだ始めていない課題は、面談に回します。
2学期制(後期)の学校の場合
後期の所見は学年末の所見です。「1学期と比べて」は「前期と比べて」に、「3学期も」は「次の学年でも」に置き換えてください。
通知表所見の言い換え表19組(行動面・学習面・対人面・生活面)
ネガティブな言葉を所見向けに言い換えた表です。左の列は先生のメモや頭の中の言葉で、所見には書きません。右の列が、所見で使う言葉の方向です。言い換えだけを入れると課題が消えてしまうので、型の「伸び」や価値づけの部分で使ってください。「手立てとセット」とある組は、必ず型で書きます。
行動面
| 頭の中の言葉 | 所見での言葉の方向 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 注意されると反発する | 理由に納得すると、自分から行動を改められる | 納得して変えた場面を書く |
| うまくいかないと引きずる | うまくいかなかったことを振り返り、次の工夫を考えられる | 「気にしやすい」など性格の言葉にしない |
| 飽きっぽい | 新しいことに興味をもって、すぐに取りかかれる | 続いた活動が1つあれば添える |
| 目立ちたがる | 人前で表現することを楽しめる | 発表や係など場面を具体的に |
| 初めてのことに尻込みする | 見通しがもてると、着実に取り組める | 前もって流れを伝えた手立てとセットで |
学習面
| 頭の中の言葉 | 所見での言葉の方向 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 計算に時間がかかる | 手順を確かめながら、正確に解こうとしている | 時間内に終えられた変化を添える |
| 作文が書けない | 話すと、自分の考えを豊かに伝えられる | 「話してから書く」手立てとセットで |
| 漢字がなかなか覚えられない | (手立てとセット)自分に合った覚え方を探している | テストの点数には触れない |
| 答えが短い | 要点を短い言葉でつかめる | 理由を一文足せた変化を添える |
| 話題から外れた発言をする | 自分なりの見方で考えられる | 問いにつなげて話せた場面を選ぶ |
| 板書を写すのに時間がかかる | 一字ずつ丁寧に書き写そうとしている | 丁寧さだけだと面談とずれる |
| 音読がたどたどしい | 文字を丁寧に追いながら読める | 練習で変わった点を添える |
対人面
| 頭の中の言葉 | 所見での言葉の方向 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 告げ口が多い | きまりを大切にしている | 誰のことを伝えたかは書かない |
| 友達のミスをすぐ指摘する | 細かなところによく気づける | 伝え方を一緒に考えた手立てとセットで |
| 感情が表に出やすい | 思いを素直に表せる | 泣いた・怒った場面そのものは書かない |
| 輪に入るのに時間がかかる | 周りの様子を確かめてから関われる | 「人見知り」など性格の言葉にしない |
| 不満を口にすることが多い | 物事をよりよくしたいと考えられる | 提案の形で話せた場面があれば書く |
生活面
| 頭の中の言葉 | 所見での言葉の方向 | 使うときの注意 |
|---|---|---|
| 掃除に身が入らない | (手立てとセット)担当がはっきりすると、自分の場所を仕上げられる | 「さぼる」と読める書き方はしない |
| 姿勢が崩れやすい | (手立てとセット)姿勢を意識できる時間が増えてきた | 体格や体調に触れる書き方はしない |
「課題+手立て+伸び」で書いた所見文例10(学習面・生活面)
〇〇は実際の学習や場面に置き換えます。手立てと伸びは、実際に行ったこと・見えた変化だけを書くのが前提です。時期は事実に合わせて直すか、削ってください。
学習面の文例
- 〇〇の計算では、手順を一つずつ確かめながら解くため、練習問題が時間内に終わらないことがありました。手順を短い言葉で書いたカードを机に置いて取り組んだところ、11月ごろからは、時間内に解き終える日が出てきています。
- 作文では、書き出しの一文が決まらず、書き始めるまでに時間がかかる場面が見られました。書く前に、伝えたいことを先生に話して三つのメモにする時間をとったところ、メモの順に書き進め、最後まで書き上げられる日が増えてきました。
- 漢字の学習では、練習を重ねても、テストのときに字の形があいまいになることがありました。部首に分けて覚える方法や、指で空中に書いて確かめる方法を一緒に試し、今は自分に合う覚え方で練習を続けています。
- 〇〇の学習では、自分の考えを一言で書いて終えることが多くありました。「そう考えたわけ」を一文足すことを約束にしてからは、ノートに考えの理由を書き添える場面が出てきました。
- 話し合いでは、話題から離れたことを話し始める場面がありました。発言の前に、黒板に書いた今日の問いを確かめる約束をしてからは、問いにつなげて自分なりの見方を話せることが増えています。
生活面(友達との関わりを含む)の文例
- 注意を受けたときに、すぐには受け入れられないことがありました。理由を短く伝え、本人の考えも聞いてから次にどうするかを一緒に決めるようにしたところ、納得したあとは自分から行動を改める姿が見られるようになってきました。
- 掃除の時間に、手が止まってしまうことがありました。担当する場所と、終わったら先生に知らせることを本人と決めてからは、自分の場所を時間内に仕上げて報告に来る日が増えています。任された範囲をやり切る力がついてきました。
- 友達のきまり違反に気づくと、すぐに先生に知らせに来ることが多くありました。きまりを守ろうとする気持ちを認めたうえで、「まず本人にやさしく声をかける」方法を一緒に考えたところ、落ち着いた言葉で友達に伝える場面が見られるようになりました。
- 初めて取り組む活動では、様子を見ているうちに時間が過ぎてしまうことがありました。前の日に活動の流れを伝えておくようにしたところ、2学期の〇〇では、見通しをもって自分から準備に取りかかっていました。
- 学級の活動の進め方について、不満を口にすることがありました。「どうしたらよくなるか」を一つ添えて話そうと伝えたところ、学級会で〇〇の進め方について案を出す場面が出てきました。よりよくしたいという思いが、行動につながり始めています。
字数が足りなければ、7や10のように伸びを価値づける一文を足します。多ければ手立ての説明を削り、課題の場面は残してください。
課題が多い子の所見で避けたい表現
課題を書くと、保護者を身構えさせる言葉が混ざりがちです。書き終えたら見直してください。
| 避けたい表現 | 保護者にはこう伝わる | 書き換えの方向 |
|---|---|---|
| まだまだ〜です/相変わらず〜 | ずっと変わらない、見放されている | 変化が見えた場面を1つ書く |
| 〜が今後の課題です(で締める) | 結局「できない子」と言われた | 伸びか、次に一緒に取り組むことで終える |
| 個性的な/独特の | 遠回しに「変わった子」と言われた | 何をしたのかを行動で書く |
| 何度注意しても〜/注意すれば直ります | 毎日叱られている | 注意の回数ではなく手立てを書く |
| 〜させていきます/指導していきます | 「問題のある子」扱いされている | 「一緒に〜していきます」にする |
所見に書かず、面談や電話で伝える課題
次の課題は、型に当てはめても所見には向きません。伝える場所を変えます。
- 人の物を持ち帰った、事実と違うことを話したなど、本人の信用に関わる出来事
- けがや、相手の子がいるトラブル(相手が特定されかねない)
- 体調や健康、家庭の事情が関わっていそうなこと
- 保護者にまだ一度も伝えていない課題
判断に迷ったら、書く前に学年主任に一度目を通してもらうと安心です。学校独自の点検ルールがある場合は、それに従ってください。
AIで言い換えるときの注意
所見の言い回しのチェックには、私もAIを使っていました。言い換えを頼むと言葉はやわらかく整いますが、課題そのものが消えた文が返ってくることもあります。「課題・手立て・伸び」の3つをそろえて渡し、返ってきた文に3つが残っているかを確かめてください。個人情報を入れないこと、校務での利用ルールを守ることも前提です。
課題を書くことは、その子の伸びを書くこと
課題が多い子は、学期中に先生がいちばん多く声をかけた子でもあります。手立てを考えて試し、うまくいかなければ変える。その積み重ねが、所見の「手立て」と「伸び」です。課題を言い換えるのは、事実を隠すためではありません。乗り越えつつあることを、保護者と本人に正しく届けるためです。
よく目に入る子ほど、記憶に残るのは困った場面に偏りがちです。担任時代の私は、目につきやすい子ばかりに目が向いていて、記録のメモも取っていませんでした。今ふり返ると、手立てとその後の変化こそ、思い出すより書き残しておくべきものでした。
所見で手が止まったら、まず「この学期、この子と一緒に試したこと」を書き出してみてください。書くべき1つは、たいていその中にあります。


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