「音楽会の練習は音楽の先生がやってくれるけど、担任の自分は何をしたらいいんだろう」「移動は遅いし、ふざける子もいるし、やる気がなさそうな子もいる。このままで本番は大丈夫なのか」
初めて音楽会を迎える新任の先生は、こんな不安を抱えているのではないでしょうか。
音楽会は、練習の中心が音楽の先生(専科)になることが多い行事です。だからこそ、担任の立ち位置があいまいになりやすい。自分が前に立って指導するわけではないのに、学級がまとまっていないと「担任の責任かな」と感じてしまう。他の学級の歌声を聞いて、焦ってしまうこともあると思います。
私も元教員として10年、そのうち担任を6年経験しました。音楽会の練習は音楽の先生が担当していたので、担任の私は「見に行く」立場でした。この記事では、そのとき実際にやっていたことと、新任の先生に伝えたいことをまとめます。帰りの会や本番前日・当日にそのまま使える声かけの例文も載せているので、参考にしてみてください。
音楽会の練習で、担任がやることは「指導」より「見ること」
まず前提として、歌い方や音程の指導は音楽の先生の仕事です。担任が専門的な指導をする必要はありません。私自身、音楽は得意ではなく、正直に言うと音痴です。それでも担任としてできることはたくさんありました。
私がいちばん大事にしていたのは、練習をよく見に行くことです。空き時間ができたら音楽室をのぞきに行き、子どもたちがどんな表情で歌っているのか、誰が頑張っているのかを見ていました。
見に行く理由は2つあります。
- 子どもたちの頑張りを、担任が自分の目で知ることができる
- 「先生が見に来てくれている」こと自体が、子どもたちに伝わる
担任が練習の様子を知っていると、そのあとの帰りの会で話す言葉が具体的になります。「頑張ってたね」ではなく、「今日の2番のところ、後ろの列の声がすごくそろっていたね」と言える。これが後で効いてきます。
もちろん、校務の都合で毎回は行けないと思います。その場合は、音楽の先生に「今日の練習どうでしたか」と一言聞いておくだけでも違います。
担任がやることの整理
- 練習をできるだけ見に行く
- 移動や態度など、生活面のことは担任がその場で注意する
- 頑張っている姿を帰りの会で伝える
- 誰よりも担任自身が楽しむ
- 練習期間中も、普段通りの学級経営を続ける
以下、ひとつずつお話しします。
移動が遅い・ふざける子には「短く、わかりやすく」注意する
音楽会の練習で私が困ったのは、移動が遅いこと、ふざけること、やる気がなさそうなことの3つでした。音楽室への移動がだらだらしていたり、並ぶときにしゃべり続けていたり。練習中に周りとふざけ合っている子がいることもありました。
移動が遅いことやふざけていることは、歌の上手下手とは関係のない生活面の問題です。ここは担任の出番なので、その場でしっかり注意していました。
ただし、気をつけていたことがあります。それは、注意は短く、わかりやすくすること。
「移動は黙って、すぐ。音楽室に入ったらすぐ並ぶよ」
「今は歌う時間。おしゃべりは終わり」
この程度で十分です。長々と説教をしたり、何度も同じことを繰り返したりはしませんでした。
なぜかというと、注意をやりすぎると子どもたちが萎縮して、歌えなくなるからです。音楽は「音を楽しむ」と書きます。叱られて縮こまった状態で、大きな声で楽しく歌えるかというと、なかなか難しいですよね。
注意すべきことは注意する。でも、引きずらない。注意が終わったら、いつもの雰囲気に戻す。このバランスを意識していました。運動会の練習でも同じことが言えるので、行事の練習全般で悩んでいる方は運動会の練習で子どもがまとまらないときの対処法もあわせて読んでみてください。
声が出ない子は、責めずに「並び」を工夫する
練習を見ていると、口がほとんど動いていない子、声が小さい子が必ずいます。担任としては「もっと声を出して」と言いたくなるかもしれません。
でも、恥ずかしくて声が出ないのは、ある意味仕方のないことです。人前で歌うことに抵抗がある子は少なくありませんし、私自身が音痴なので、その気持ちはよくわかります。
そこで私がやったのは、並びを変えることでした。よく声が出る子を後ろの列にして、その前に歌いにくそうな子を立たせるようにしたのです。
後ろから元気な歌声が聞こえてくると、前に立つ子は自分の声が目立ちにくくなります。周りの声に包まれる感じになるので、前の子も声が出しやすくなります。並びは音楽の先生と相談しながら決めることになると思うので、「この子は後ろの声に支えてもらえると歌いやすいかもしれません」と担任から伝えてみるのもいいと思います。
やる気がなさそうな子には、役割を渡す方法もある
声が出ないのとは別に、そもそも練習にやる気がなさそうに見える子もいます。こういう子には、小さな役割を渡すという方法もあります。たとえば、移動のときの声かけ係や、練習後の楽譜の回収係など、歌以外の場面で学級に貢献できる場をつくるやり方です。
また、練習の最後に「今日うまくいったところ」を一言だけ書く振り返りカードを使うのもおすすめです。歌うことには乗り気でなくても、「自分の学級がだんだん良くなっている」と感じられると、少しずつ気持ちが向いてくることがあります。
頑張っている姿は、その日の帰りの会で話す
練習を見に行って、頑張っている姿を見つけたら、その日の帰りの会で話していました。これは私が担任として一番大事にしていたことかもしれません。
子どもたちにとって、音楽の先生にほめられるのとはまた違う意味があります。「担任の先生がちゃんと見てくれていた」と感じると、次の練習への向き合い方が変わってきます。
私が話していたのは「勝ちたいな」「頑張っている姿を見て感動した」といった、短くて素直な言葉です。そのまま使える形にすると、たとえばこんな感じです。
「今日、練習を見に行きました。みんなが頑張っている姿を見て、先生は感動しました。」
「今日の練習を見て思った。このメンバーで勝ちたいな。明日も一緒に頑張ろう。」
特別に上手な言葉はいりません。担任が見て、感じたことを素直に伝えるだけで十分です。ポイントはその日のうちに伝えること。時間がたつと、子どもたちの中でも練習の記憶が薄れてしまいます。
ちなみに、行事で子どもたちが頑張った様子は、通知表の所見にも書きやすいエピソードになります。練習中に見つけた一人ひとりの姿をメモしておくと、あとで助かります。書き方は通知表の所見 行事の文例でまとめています。
帰りの会で歌う時間をつくる(学校全体を巻き込む)
もうひとつやってよかったのが、帰りの会で歌う時間をつくったことです。
音楽の授業の練習だけでは、どうしても歌う回数が限られます。そこで帰りの会で1曲分、基本は毎日歌うようにしていました。連絡事項が多くて時間がない日はやめましたが、それ以外は毎日です。
学年から学校全体へ広げた流れ
最初は、同じ学年の先生と「帰りの会で歌おうぜ」という話になったのがきっかけでした。私はそれだけで始められると思っていたのですが、同じ学年の先輩の先生から「学年だけでやると、他の学年から苦情が来るかもしれない」という意見が出ました。確かに、帰りの会で歌えば他の学年の教室にも声は聞こえます。
そこで、学校全体を巻き込もうということになり、管理職に相談しました。
最初の年は、毎日はできませんでした。それでも次の年からは、各学年が一斉に始められるようになりました。みんなでやって、楽しかった。これが素直な感想です。
新任の先生がいきなり学校全体に提案するのはハードルが高いと思います。まずは同じ学年の先生に「帰りの会で歌ってもいいですか」と相談してみてください。そこで出てきた心配ごとも含めて、学年や管理職と一緒に形にしていけば大丈夫です。1年目からうまくいかなくても、次の年につながります。
どの子よりも、担任が楽しむ
練習期間中、私が意識していたのはどの子よりも自分が楽しむことでした。
音楽が得意かどうかは関係ありません。音痴の私でも、楽しむことはできます。担任の気持ちは、子どもたちに伝わります。
担任が「早く練習を終わらせたい」「うまくいかなかったらどうしよう」という顔をしていると、子どもたちもどこか不安になります。逆に担任が楽しそうにしていると、「先生が楽しんでいるなら、自分たちも頑張ってみようかな」という空気が生まれやすくなります。
練習期間中も、普段通りに過ごす
もうひとつ大事にしていたのが、練習期間中も普段通りに過ごすことです。本番が近いからといって急に厳しくするわけでもなく、逆に機嫌をとるように甘くするわけでもない。いつもの学級のままで過ごしていました。
振り返ってみると、音楽会の練習期間に「子どもが言うことを聞かない」「イライラする」と感じることは、実はあまりありませんでした。理由ははっきりとはわかりません。ただ、担任が楽しむこと、注意は短くすること、普段通りに過ごすこと。この3つが、結果的に効いていたのかもしれないと思っています。
本番前日・当日の声かけ例文
私が担任をしていた音楽会は順位がつく形式だったこともあり、子どもたちは本番までずっと「勝ちたい」と言っていました。その気持ちは大切にしつつ、本番直前には少し違う角度から話をしていました。
本番前日の帰りの会(例文)
前日は、練習で見てきた頑張りを振り返る話がおすすめです。
「いよいよ明日が本番です。練習を見に行くたびに、みんなが頑張っているのがわかりました。明日は、今までの練習の中でいちばん楽しんで歌ってください。」
本番当日
当日は、こんな話をしました。
「みんなと一緒に練習できて、先生は最高でした。何度も感動しました。音楽会はこの先もあるけど、このメンバーで歌うのは、人生で今日が最後です。だから、最高に楽しんで、一生忘れられない思い出を作ろう。」
勝ち負けはもちろん気になります。でも、本番直前に「絶対勝つぞ」とプレッシャーをかけるより、「このメンバーで歌えるのは今日だけ」と伝えるほうが、緊張している子も肩の力を抜きやすいと思います。
本番が終わったあとは、学級通信で子どもたちの頑張りを保護者に伝えるのもおすすめです。行事のあとの通信の書き方は学級通信11月の例文で紹介しています。
新任の頃の自分に伝えたいこと
最後に、新任の頃の自分に向けて書くつもりで、伝えたいことがあります。
音楽会の練習が始まると、どうしても他の学級と比べたくなります。隣の学級のほうが声が大きい、まとまっている、担任の先生の指示がうまい。そう感じて落ち込む気持ちは、よくわかります。
でも、他の学級と全く同じことはできません。先生も違えば、子どもも違うからです。比べて落ち込むより、よく見て、何がすごいのかを観察するほうがずっと役に立ちます。声のかけ方なのか、並び方なのか、練習の前後の過ごし方なのか。観察していると、少しずつ見えてくるものがあります。
そして、経験がない今はそれができなくても大丈夫です。数年後には、絶対に同じことができるようになります。悩みすぎるより、参考にしつつ、自分らしく学級経営をしていけばいいと思います。
まとめ:担任の役割は、見て・伝えて・一緒に楽しむこと
音楽会の練習で、担任ができることをまとめます。
- 練習をできるだけ見に行き、子どもの頑張りを自分の目で確かめる
- 移動が遅い・ふざけるなどは、その場で短く、わかりやすく注意する
- 注意をやりすぎない。萎縮すると歌えなくなる
- 声が出ない子は責めず、並びを工夫する
- 頑張っている姿は、その日の帰りの会で伝える
- 帰りの会で1曲歌う時間をつくる(学年・管理職と相談して)
- どの子よりも担任が楽しみ、練習期間も普段通りに過ごす
専門的な指導は音楽の先生に任せて大丈夫です。担任にしかできないのは、子どもたちをいちばん近くで見て、その頑張りを言葉にして返すこと。そして、一緒に音楽会を楽しむことです。
初めての音楽会は不安も多いと思いますが、終わったあとにはきっと、学級の子どもたちとの思い出がひとつ増えているはずです。

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